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略歴
1933年11月 満州、錦州省朝陽 生まれ
1944年   広島に引き揚げ、三次市で終戦を迎える
    劇団サークルを結成し、演出、美術、役者などの活動
1955年   22歳で上京、歌舞伎小道具の製作会社勤務
1959年   人形師として独立、創作人形づくりに本格的にとりくむ
1965年   第17回現代人形美術展で「ヒロシマよりこころをこめて」が入選
1974年   NHKテレビ「新八犬伝」の人形美術を担当、一躍注目を浴びる。
以降、創作人形制作をはじめ、人形芝居の上演、舞台・映画の衣装デザイン、着物デザイン、演出、脚本も手がけ、アートディレクターとしても多岐にわたり活躍
1996年   日本橋人形町にアトリエ兼人形展示館「ジュサブロー館」を開設
2000年   21世紀を期に、ジュサブローを本名の寿三郎に改める


モービル児童文化賞(1975年)、ゴールデンアロー賞(1976年)、芸術奨励(文部大臣新人賞)(1977年)芸術祭優秀賞(1980年)など受賞多数。1990年にはイギリスのローレンス・オリビエ賞にノミネートされる。

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 今回の「今月の顔」は、人形師の辻村寿三郎さんです。日本橋人形町の表通りからちょっと入った一角、兔(うさぎ)の暖簾を分けて「ジュサブロー館」に一歩足を踏み入れると、そこには幻想的な辻村人形の世界が広がります。ひとつひとつの人形たちが生き生きと目を輝かせ、なにかを語りかけてくるようでした。人形たちに囲まれ嬉々とした表情の寿三郎さんに、人形づくりの楽しさ、人形町界隈のお話などを伺いました。

独特の創作人形の世界を作り上げてこられた寿三郎さん、人形づくりをはじめられたきっかけとはどのようなことでしょうか。
 とりたててきっかけというのはないのです。幼い頃から、綺麗な布地とその手触りが好きで始終触れていました。生家は満州で料理屋を経営しており、今で言うレストランシアターのようなものです。華やかで綺麗な着物の芸者衆が身近に出入りしており、お芝居なども演じていて、子供のころには舞台で雪を降らせる手伝いをしたりしていました。布地の切れ端は大切な遊び道具で、物心がついた時にはもう人形を創っていましたね。その後広島で過ごした10代も、物語を考え、人形を創り、お芝居をするのが楽しい遊びでした。22歳で東京に出てきて、はじめは人形劇団に入ったりしながら、歌舞伎の小道具を作る会社につとめ、伝統的な物づくりの修業をさせてもらいました。この経験は、人形師として独立し、やっていくうえで、たいへん役に立っています。人形師にはなるべくしてなった、自分の一番好きなことが人形づくりだったという感じです。
 
江戸時代、人形浄瑠璃の芝居小屋があり、人形師が多く住んでいたといわれる日本橋人形町に、「ジュサブロー館」はまさにピッタリの感ですが、開設された意図、経緯などを伺わせてください。
 人形たちの美術館を造りたいというのが私の長年の夢で、1996年12月に「ジュサブロー館」を開設しました。実をいうと、この町が人形に深いゆかりがあるというのは後で地元の方たちにいろいろ教えていただき分かったことです。たまたま諸条件にあった場所が人形町だったのです。ご縁があって、なにか目に見えぬものに牽かれて来たのかもしれませんね。「ジュサブロー館」は、私の仕事場でもありますが、人形たちの館です。人形は、つくり手の、さらにはそれを見る人の“こころを映す鏡”です。ここを訪れ、人形をご覧になったみなさんが、ほっとしたり、元気になったりしてくだされば、私にとってはこのうえなく幸せなことです。
 
人形展示のほかに、イベントも開催されていると伺いましたが、「ジュサブロー館」についてご紹介ください。
 ジュサブロー館の1階は、木綿兔(もめんと)と称する展示スペースと、人形制作のアトリエがあります。人形作りの為に手を動かしながら、観にいらした方たちと会話が弾むこともあります。その奥には「目玉座」という劇場スペース、現在は毎月第3火曜日6時30分から「人形舞とシャンソンの夕べ」を開催しています。目玉座という名称は、かつておつき合いのあった寺山修司さん(詩人、天井桟敷主宰)が、「ジュサブローの人形は目に特徴があるので、いずれ人形芝居の小屋を持つなら、目玉座という名前にしたらよい」とおっしゃって下さったのを思い出して付けました。30席ほどのこじんまりとしたスペースですので、イベントには事前予約をお願いしています。2階は雛具楽(ひなぐら)という年に2、3回入れ替える展示スペースと、絵葉書、ハンカチなどの雑貨、作品集の展示販売コーナーがあります。内装から手がけ、調度品も気に入ったものを集めました。「ジュサブロー館」紹介のHPがありますので、ご覧頂きたいと思います。
アドレスはhttp://www.jusaburo.com
 
中央区の中でもよくご存知の、人形町界隈、歌舞伎座界隈に対する印象、また気にいっておられる所がありましたらお聞かせ下さい。
 最近は世の中のスピードがたいへん速くなってきていますね。その中で情緒とか風情が失われつつあり、とても残念なことだと思っています。歌舞伎座界隈も私が仕事で出入りしていた頃とは、ずいぶん変わってしまいました。人形町界隈は、まだ下町の感じが残っていて、隣近所のおつき合いもありますし、住み心地、居心地は良い場所です。開館当初から3年ほど、ここに住んでいましたが、手狭になり現在住まいは別に移しました。近距離ですので、毎朝歩いて、ときには途中水天宮近くのホテルのカフェでモーニングをとったり、町の空気に触れながら通っています。仕事場に着くと、掃除をし、表に水を打って開館準備をするのが、毎朝の日課です。
 自宅から眺める、永代橋や隅田川沿いの風景はとても気に入っています。ポンポン船が行き交い、かもめが餌をついばむ様は、そこはかとなく生活感、情緒があり、始終見ていても飽きないですね。かつて北斎が五十三次を描いたあたりに立って、当時のことに創造を馳せるひと時も、楽しみのひとつです。
 
辻村ワールドは、創作人形にとどまらず、人形芝居や舞台美術、映画の衣装デザイン、着物デザインなど多彩な広がりを見せていますが、今一番力を注がれていること、また今後取り組まれたいテーマなどがございますか。
 泉鏡花の世界をはじめ、時代を溯るかたちで創作人形を数多く創ってきましたが、数年前からライフワークとして「源氏物語」54帖に取り組んで、ようやく三分の一ほど完成したところです。1帖に何体もの人形が登場するので、膨大な数になります。平成の華麗な立体源氏絵巻が出来ればいいと思っています。人形仏、神話の世界、歴代の天皇など、創りたいものは、和洋問わずまだまだ無限にあります。「サロメ」も構想を熟成させているところです。また、貝殻など、自然の素材を使った面白さにもはまり込んで・・・、次々と創作の世界は広がっていきます。柔らかい素材で、いかにパワーを、生き生きとした存在感を創り出して行くか、課題がつきません。
 
これまでの人生で、とくに印象にのこっている出来事、人との出会いなどがありましたらお聞かせ下さい。
 イタリアの映画監督フェデリーコ・フェリーニさんとの出会いでしょう。彼の作る映画の手づくり感が好きで、よく見ていましたが、イタリアで人形芝居をした時に観に来てくださり、いろいろお話をしました。「あなたは現代のピノキオ、和風ゼペットじいさんだ」と最高の賛辞をいただきました。私自身は、フェリーニさんの物を創る心の中に、「職人の誇り」を強く感じ、たいへん共鳴しました。
 
最後に、次代を担う若い人たちに、ひとことメッセージをお願い致します。
 想像する知恵といいますか、「イメージの世界」を持つことが出来るのは、人間だけに与えられた能力です。イメージの世界を広げ、高めることによって、人はより幸せになれるということがとても大切だと思います。ものをみつめる、そこからイメージが広がり、喜びや悲しさ、怖さ、寂しさなどを感じる心が生まれます。こうした感性をはぐくむのは、小さい時期がとても大事です。現代社会では、知識が優先され、感性の部分が忘れられがちのような気がします。これから親となり、子供を育てていく若い方たちには、ぜひそのことを考えてもらいたいです。

※記事の組織名や肩書は掲載当時のものです。  
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