季刊紙「日本橋美人新聞」の巻頭インタビューより、各界の著名人と山田晃子氏の対談を掲載しています。

山田 今回の巻頭インタビューは、平和不動産株式会社の岩熊博之社長にお話を伺います。まず、ご経歴についてお聞かせください。

岩熊 私は福岡県北九州市で生まれ、八幡製鐵所(現・新日鐵住金)が隆盛を誇る産業が中心の街で育ちました。大学進学のために上京し、海外との係わりを通じて日本経済に貢献できればと思っていたので、外国株市場も手掛けている東京証券取引所に惹かれ、昭和51(1976)年に入所しました。最初は株式部に配属され、財務部、情報サービス部などの職務にも携わり、その後、代表取締役社長に就任いたしました。平成25(2013)年より現職を務めておりますので、足掛け40年に渡り日本橋兜町の変遷を見てきたことになります。かつてこの街は多くの証券会社の本支店が集積し、多数の証券関係者で賑わい、活気に満ちていました。しかしながら平成2(1990)年以降の情報通信技術の革新で株券売買取引の全面システム化が施行し、平成11(1999)年4月30日に株券売買立会場が閉場されると、我が国の長期化しているデフレと相俟って街が徐々に色褪せてしまいました。
私は日本橋兜町に軸足を置く弊社の優位性を生かし、地域の潜在価値を引き出しながら再活性化への道を拓く必要があると考え、様々な取り組みに着手しているところです。


山田 平成32(2020)年の東京オリンピック・パラリンピック誘致の決定以降は、各所で再開発に弾みが付いています。御社が事業主体の「日本橋兜町・茅場町一丁目地区」の開発は、平成27(2015)年6月には東京圏国家戦略特区の都市再生プロジェクトに追加されました。また舛添要一東京都知事が注力する「東京国際金融センター構想」の一翼も担い、注目を集めていらっしゃいます。今後の取り組みについて、どのようにお考えですか。

岩熊 既にトヨタ自動車株式会社の奥田碩相談役を座長に「投資と成長が生まれる街づくり協議会」を発足し、有識者のご意見を伺いながら日本橋兜町の再活性化に向けての中間提言を纏めました。「人が集い、投資と成長が生まれる街づくり」をコンセプトに、歴史、ロケーション、社会的背景を踏まえつつ周辺の街の機能とも融和し「日本橋兜町らしさ」を再構築する予定です。平成32(2020)年中に、茅場町駅の北側の2つのエリアを再開発し、新しいビルの竣工を目指して取り組んでいます。具体的には投資家と企業が交流する街として、セミナーやアカデミー、イベントなどを開催する施設、将来的にはホテルなど住環境も兼ね備えた新たな複合施設を提供する計画を進めているところです。

山田 御社の本社ビルである日証館は、昭和3(1928)年に日本資本主義の発展に貢献した渋沢栄一翁の邸宅跡地に建設されました。建築家横河民雄が設立した横河工務所(現・横河建築設計事務所)の代表的な建築作品(施工・清水組/現・清水建設(株))として名を馳せています。このような歴史的建造物については如何なされるのでしょうか。

岩熊 日証館のような歴史のある建物を補修しながら使い続け残すことは、街の記憶としてのDNAを後世に継承していく上で意味があります。日本橋地域の発展はルーツを辿れば江戸にあり、明治初期には日本初の銀行や株式取引所が設立され、また郵便、電力、銀行や証券などの事業もこの地で発祥しました。先人が培った素地の上に現在の街が結実しているのですから、新旧の調和を計りながら街の開発をしていくべきだと思っています。

山田 御社にはEDO ART EXPOの一環で開催し今年で4回目を迎えた「東京都の児童・生徒による 江戸 書道展」の当初から、日証館の中に展示会場を設置し、ご協力いただいています。重厚で荘厳な建物に、来場者の好評を博していると伺っています。

岩熊 当館にビジネスでお起しの方々も大変に興味深く書道展をご覧くださり、回を重ねるごとに注目される展示会に育っている感がいたします。会期中には日証館に作品を見に、お子さんやご家族、関係者がいらっしゃるので通常とは異なる人の流れが生まれて新鮮な気がしますね。

山田 「第8回EDO ART EXPO(平成27(2015)年9月25日~10月13日)」は、中央区、千代田区、港区、墨田区の名店、企業、ホテルや文化・観光施設など60カ所以上が会場となり開催しています。「江戸の美意識」をテーマに、「美は遺伝する江戸のDNA」をコンセプトとして江戸から続く伝統や文化、歴史などに関わる展示を行い、国内外を含め約40万9千人もの方々が各会場を訪れてくださいました。

岩熊 書道展を通して、伝統や文化を次世代に繋いでいく一役を担える機会を得て嬉しく感じます。今後もご一緒に連携をとりつつ江戸時代から受け継いできたDNAを残していくためにも、更にフォーカスした新たな企画も考えて行きたいですね。

山田 有難うございます。ところで岩熊社長にとって、思い入れのある日本橋のスポットはございますか。

岩熊 日本橋の中央通りは、道幅が広く趣きのある街並で気に入っていますので、平日はもとより休日の買物や食事も日本橋髙島屋やこの近隣に出掛けます。
また、残念ながら現存しない建物となってしまいましたが、日本橋兜町のランドマークと言えた旧東京証券取引所ビルをもう一度見てみたいと切に感じています。手前味噌で恐縮ですが日証館は、実に存在感があり私にとって心が落ち着く場所です。

山田 私たちは江戸(東京)の地域ブランド「日本橋美人」というネーミングでも多岐にわたる事業を展開しています。「日本橋美人」とは、どのような女性だと思われますか。

岩熊 ひと言で申し上げるなら伝統に裏打ちされた知性を持つ、粋で凛とした佇まいの女性を思い浮かべるということでしょうか。日本橋地域には、我が国を代表するグローバル企業や老舗が集積しているので、お勤めされている女性たちも自然とそのような「日本橋美人」が多くいらっしゃる気がいたします(笑)。


■撮影:小澤正朗  ■撮影協力:ロイヤルパークホテル

  ※本記事は2015年12月15日時点の内容です。
 
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