季刊紙「日本橋美人新聞」の巻頭インタビューより、各界の著名人と山田晃子氏の対談を掲載しています。

山田 今回は「日本橋美人新聞」と共に発行の「日本橋都市観光マップ」創刊15周年を記念して、2019年6月にホテル開業30周年を迎えられる株式会社ロイヤルパークホテルの荒畑和彦社長にお話を伺います。まずは、ご経歴についてお聞かせください。

荒畑 私は東京都渋谷区で生まれ育ち、大学を卒業後は総合商社に入社し海外駐在も体験しました。しかし、街づくりや都市開発の仕事に就きたい想いを抱き続けていたので、好機に恵まれた1990年に三菱地所株式会社に転職いたしました。
 いくつかの部門を経て、グループ会社の株式会社横浜ロイヤルパークホテルの社長に就任し、一年後の2016年から現職を務めております。
 私にとってのホテルライフは、生活エリアに多くの一流ホテルがあったのでコーヒーを嗜む程度でしたが、生意気にも(笑)学生時代にはちょっと背伸びをして出入りし、大人の世界を垣間見ていたのが始まりです。
 これまでの海外駐在では、さまざまな都市の千差万別なホテルを活用する機会が数多くありました。現在はお客様にご利用いただく立場ですが、その経験が少なからず役に立っていると自負しております。


山田 貴ホテルの30周年記念事業が2018年6月に始動し、コンセプトに「CHIC TOKYO STAY~粋な街の、意気なおもてなし~」を掲げていらっしゃいます。仏語の「Chic」は「粋な」「お洒落な」などの意味がありますね。

荒畑 これは30周年に向けたお客様への商品ブランドメッセージであり、具体的にはハードとソフト、ハートをもう一度磨きあげ、ホテルが培ってきた価値を再構築しようという考えです。目指すのは「選ばれるホテル」「Glocal(グローカル:ローカルに愛されグローバルに評価される)」「Relisient(レリジェント:景気動向に左右されない強固な経営基盤)」です。


山田 国内で初めて導入されたと話題になり一年が経過したスマートフォン「handy」は、ホスピタリティに革新的なソリューションを提供したと伺っています。

荒畑 handyは無料・無制限で国内・国際の通話、データ通信が可能なので、お客様のために客室に設置しました。
 無料Wi-Fiの環境が整備されつつあるなか訪日外国人観光客の方が、いつ、どこでも通信環境をご利用できるほか多言語での観光情報、ホテルのサービスやプロモーションにも使えます。
 新しくスタートした「handyを持って日本橋へ出かけよう」プロジェクトは、提携先の老舗やデパートを訪れると、特典や商品の購入時に割引が受けられるサービスです。ホテルの国内外のお客様に日本橋の文化に触れることで滞在型観光をお楽しみいただき、同時に地域の回遊を促進する一助になればと思っております。

山田 江戸の伝統や文化、芸術を多くの方々にお伝えし、来訪者の回遊性を高める「EDO ART EXPO」と共通しています。この事業は中央区、千代田区、港区、墨田区の名店、企業、ホテルや文化・観光施設など既存の建物、約60カ所がパビリオン(会場)になり「江戸の美意識」をテーマに展示を行っています。
 貴ホテルは当初から「EDO ART EXPO実行委員会」の事務局を担い、ロビーを浮世絵展示会場にされるほか、弊団体の活動に多方面にご尽力くださっています。

荒畑 海外のお客様も日本の文化といえる浮世絵をよくご存じで、興味深くご鑑賞され、同様の作品を購入したいとのお問い合わせもあったようです。また、展示会場のご協力をすることで、私自身も改めて浮世絵の魅力を感じました。

山田 今回の19日間の会期中には、例年に増して台風の発生が多く、暴風と大雨などの天候不順が影響を及ぼし、来訪者は約三十三万人でした。しかし「東京都の児童・生徒による“江戸”書道展」は、おかげさまで回を重ねるごとに盛況で、今回の第7回は応募総数が4000点以上あり、72社のスポンサー企業のご協力で、381点の入選作品に企業賞を授与しました。

荒畑 日本橋の地に根差した弊ホテルが地元の皆様と力を合わせ、次世代に伝統や文化を継承する事業の一翼を担い、地域社会に貢献できるのは嬉しい限りです。今後とも、宜しくお願いします。

山田 こちらこそ、宜しくお願い申し上げます。ところで荒畑社長にとって、お気に入りの日本橋のスポットはございますでしょうか。

荒畑 子供の頃に親に連れられ訪れた日本橋は、私にとって敷居の高い大人の街のイメージでした。現在は江戸の四大名物食と言われる寿司・天ぷら・そば・うなぎの名店が職場の近辺に多いので、食べ歩くのを楽しみにしています。
 私のゲストには手前味噌ですが、5階の「日本庭園」にご案内します。併設した茶室「耕雲亭」は、三菱財閥の二代目・岩崎彌之助、小彌太の父子二代により設立された静嘉堂文庫(東京都世田谷区)にあった茶室「釣月庵」を模しています。この名は永平寺六十八世貫主の秦慧昭禅師が曹洞宗の開祖・道元禅師の詠まれた漢詩「釣月耕雲古風を慕う」から抜粋して命名されたもので、その由縁で「耕雲亭」と名付けました。庭園に囲まれた茶室は現在もお茶会でご利用でき、建物と庭の調和は日本独自の美意識が感じられます。

山田 お茶室にいると都会の喧騒を忘れますし、庭園は都心の中にありながら、多彩な草木に囲まれて四季折々の景観が楽しめます。穏やかで落ち着いた雰囲気の中では、心身をリフレッシュできますね。
 私たちは“心も身体も美しく”をコンセプトに江戸(東京)の地域ブランド「日本橋美人」を通して、多岐にわたるプロジェクトを展開しております。その一端でホテル内のレストランやラウンジでも、4種類のオリジナルの「日本橋美人商品」を扱われています。荒畑社長にとって「日本橋美人」とは、どのような女性だと思われますか。

荒畑 日本橋はビジネス街の一面も兼ね備えていますので、仕事を上手にこなすマネジメント能力の高い女性が思い起こされます。そして、先ほどご紹介いただいた「Chic」を私なりに日本橋美人に釈すならば、「江戸の良き情緒が残る中で育まれた、品性のある資質を伴った洗練された女性」でしょうか。



■撮影:小澤正朗  ■撮影協力:ロイヤルパークホテル
■ヘアアレンジ・着付:林さやか  ■衣裳協力:きもの工房まつや

  ※記事の組織名や肩書は掲載当時のものです。
 
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