中央区には事業所が約4万社あります。そこで働いている人は72万人に上ります。商売が上向きになればこの72万人の人が幸せになれます。私の役目は中央区の企業や働く人が幸せになるお手伝いをする事です。
起業、廃業、倒産、第2創業、バブル、事業承継、相続、これら全てを事業の現場で体験した屈指のコンサルタント「岩田剛三」が体験を通して感じた商売や生き方のコツを皆さんにお話しします。

一か月のご無沙汰です。すっかり陽が短くなり、夏が懐かしい~ですね。お元気でお過ごしでしたか。食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋。ゴルフに行って、帰って来てテラスで推理小説を読みながらワイン!なんてしてみたいです。(笑)
さて前回の続きで、今回は「売価」についてです。貴方が会社の経営者、または販売責任者で商品の売価を決める時にどういう方法で決めていますか。色々なやり方があると思うのですが代表的なものに絞ると次の5つになります。

  1. (1)積算原価型
  2. (2)グローバル型
  3. (3)市場型
  4. (4)マーケティング型
  5. (5)戦略型

この名称は私が勝手に付けたものもありますので、中身をちょっと読んで頂いてああこれは我社ではこう呼んでいると置き換えてみてくださいね。


まず1番目の積算原価方式、これは一般的な方法でご存知だと思いますが、かかる原価を積み上げていく方式です。材料費がいくら、製造に関わる人件費や経費がいくら、販売経費がいくら、こういう物を全部積算して最後に利益を乗せて売価を決めます。日本では多くの企業がこの方式を使っています。有名な東京電力もこれで売価を決めています。


2番目にグローバル型、呼び方は人によって違うかも知れませんが、最初に売価をえいやっと決めるのです。ある程度数量が見込める価格を設定します。例えばポロシャツを500円で売る。その中から利益を見込みます。営業経費を見込みます。利益と経費合わせて300円かかるとすれば、残りは200円ですよね。この200円で作ってくれる所を探す訳です。国内で無ければ中国に、中国に無ければベトナムにタイにインドにと探していく訳です。昨今、グローバル化が進む中であのユニクロを始めこの方式が今は多いです。消費者が500円以上の価値があると認めてくれなければ終わりですから、品質管理はとても重要です。


3番目は市場型、その中の一つが市場調査型、既に先行商品が多数存在している場合です。ライバル社がいくらで売っているのか調査をしてその価格を元にこれなら100円高くても行けるとか、機能が優れているからその分高く売るとか、市場の価格をみて決める訳です。生鮮品とかもこれに近いですね。松茸などの値段も市場の需給バランスで決めて行きます。


4番目がマーケティング型、中小企業にはこの方法がオススメです。売価を決める際に、その商品の持つ特異性や機能性がもたらす「結果」にフォーカスを当て、こういう事ならこの価格にというシナリオを作ります。物のスペックをあまり重視せずにその商品を買う事や、使う事によって「何」が起きるか、「事」に絞ってみるのです。単なるポロシャツだから1,000円という事ではなく、このポロシャツを着る人にはどういう暮らしをして欲しいのか、またはこのポロシャツを着ると何が起きるのか、または何かを起こすポロシャツだとしたら。例えばこのポロシャツを買うと「ポロシャツを着て女性にもてる10の秘訣」なんて小冊子が付いていて、さらに実際に使用した人の声もついていて、「このポロシャツを着たら結婚出来ました。」とか「合コンでこのポロシャツ効果抜群でした。」なんて事が起るとする。それが本当なら、原価積上げ方式や市場リサーチでは5,000円の売価となる品物が仕掛け次第で100,000円でも売れるかも知れません。

高級車で有名なBMWなんかは「車」を売っているのではなく「走る喜び」を売っている訳で、だから積算原価よりも高くても買う人はいる。さらに「安全性」が高ければもっといい訳です。「物」を売るのではなく「事」を売る。例えば洗濯機、この電気洗濯機を買う事によって、便利になるのですが、それだけでなく空いた時間を有効に使う事によって「暮らしが豊かになる。」この電気洗濯機で洗ったパンツを履くとあまりの気持ちよさに元気が出る!(笑)これなら少し高くても売れませんか?どのメーカーも何リットルとか、消費電力とか、機能とか、スペックの競争をしている。これでは価格も横並びです。このマーケティング型で売価を考えて行くと、自社の商品を今までと別の角度で見れますので、この商品が起こす「事」による本当の価値、独自性のある価値が判って来ます。この商品は何の為にあるのか、お客様にこの商品を買う意味を教えてあげたりする。是非、一度別の角度から見て下さい。これだけ物が溢れている時代ですからもう文明の利器ではなく、暮しを豊かに楽しくする文化の利器として売価や売るシナリオを見直してみたらどうでしょう。貴方の売っている商品の向こうにお客様の幸せが見えてきませんか。


さて、もう一つ第5の方法ですが戦略型と私は呼んでいます。その中に2つのやり方があって、一つはとにかく安く売る。その目的はライバルを叩きつぶす事、市場を独占する事です。相手が500円で売っているなら、家は400円、相手が400円に下げてくれば350円、正に不毛の戦いです。ただただ体力がなくなっていくという悲惨な戦いになります。牛丼の業界で時々起ります。マックもつられた事があります。企業経営に何のメリットもありません。我々中小企業には縁のないやり方ですよね。もう一つは高売りする方法というか、高く売らざるを得ないという商品があります。主に耐久財です。代表的なのはピアノです。一回買うとまず2回は買いません。潜在的なお客様が仮に10名いたとします。この10名に一時に売ってしまうと、翌年から売上げがゼロになります。この場合は1年に一つずつ売っていけば10年間持ちます。この10年の間にこのお客様が買ってくれるであろう次の商品を開発していくのです。耐久財の場合はあまり安くして一度に売ってしまうと市場が無くなる可能性がありますので要注意です。


これを読んでどうですか。貴方の会社はどのやり方で決めていますか。企業経営の目的は「人を幸せにする事」だとしたら、選ぶ道はどれか?よく考えてみましょうね。


この時期は未だに夏の喧騒が心に残る中で、秋風がそよぎ夏の終わりを告げます。色々な想いが交錯しながら少しずつ季節は冬へと変わっていきます。貴方と貴方の大切な方の周りに時が豊かに流れ、幸せな生活をいつまでもいつまでもずっとずっと送れますように…!


  
 
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