中央区には事業所が約4万社あります。そこで働いている人は72万人に上ります。商売が上向きになればこの72万人の人が幸せになれます。私の役目は中央区の企業や働く人が幸せになるお手伝いをする事です。
起業、廃業、倒産、第2創業、バブル、事業承継、相続、これら全てを事業の現場で体験した屈指のコンサルタント「岩田剛三」が体験を通して感じた商売や生き方のコツを皆さんにお話しします。

 皆様明けましておめでとうございます。9連休の方も多くいたかと思いますが、のんびり出来ましたでしょうか。日頃出来ない大掃除やら、片づけやらで終わってしまった方もいらっしゃいますよね。私もいつも通りどたばたと新年を迎えました。今年1年もどうやらドラマチックな一年になりそうです。本当はロマンチックに行きたいのですが、無理は禁物ですので。今年も張り切って参りましょう。


 新年最初のテーマは「お客様第一主義」。これってよく聞きませんか。お客様第一だからお客様の言う事に耳を傾ける。いや、何でも聞く。と言う企業があります。特に受注産業はどうしてもこうなりがちです。よくあるのはアンケートを実施しているところが多くあります。ありがちなのはお客様に無理やりアンケートを記入させるお店、何か上げるから(例えば次回ドリンク1杯サービス)書いてくれと、支払の時に言われたりします。でもね、お客様はアンケート書きたい訳じゃない。美味しいと思ったら帰り際に「美味しかったです。」と言って帰る。不味かったら次こないから判る。お客様の言う事をひたすら聞いて聞いて聞きまくって、その会社の業績が上がるのならいい。でも、不思議と下がる会社が多い。昨年新聞にこんな記事が。

「スーパー●●●、生鮮食品に不満なら返金!」

●●●は25日、生鮮食品の強化策として、4月1日から品物に不満があれば返金する「生鮮食品100%返金保証」プログラムを始めると発表した。グループ374店舗で実施する。
対象は「生鮮食品」として販売している肉、魚や野菜、果物などで、鮮度や品質はもちろん「思ったよりまずかった」などという個人差がある不満にも積極的に答えていくという。


 さて、これどう思いますか?僕は「●●●に納めている農家や漁港の人は大変だろうな。」と思ったのですが。野菜や果物、魚介は自然の太陽の下で育てられるので、どうやったって気象条件で出来が変わる。ましてや魚は海の中で勝手に育つ。個体によって脂の乗りも違う。それはお客だって判っている。脂の乗りが悪いから返品するわ。このキャベツ何かぱさつくのよね。この大根辛いから…。全く同じ物を出してもその人の体調によって味も変わる。ここまでお客様の言う事を聞く必要があるのだろうか。こんな商売をしていて面白いのだろうか。返品になった物は恐らく生産者に返されるのだろうから、そのコストは誰が持つのだろうか。農家や漁師いじめにならないのだろうか。このスーパーが返品はあまり無いと読んでいるのだとしたら、それはそれでお客様を馬鹿にしている事になる。


 お客様の声を聞く。これはこれで重要な事なんです。それだったらもっと上手に聞きませんか。例えばですが、アンケートも一つの方法です。普通のアンケートですと従業員の態度についてとか、価格についてとかが5段階になっていて○を付けたりします。でも、項目によってはこんなの自分で考えれば判るだろうという質問があったりして質問自体が既にクレームの対象になりかねません。先日も宿泊した旅館のアンケートで「お部屋はきれいに掃除されていましたか?」とあったのですが、そんなのは掃除した人が自分で見るか、責任者がみりゃ判るだろうって思いませんか。もっとアンケートを単純にしてみたらどうでしょう。「こんなとこが良かったよという所をご記入下さい。」これだけです。しかも○×ではなく記入式です。


 勿論前後に多少の文脈がありますが、「お客様の喜びの声をお聞かせ下さい。」とかお礼の言葉とかを短く入れて(短くていいですよ。)、これを納品書と一緒に付けて実施してみました。そうすると、以前より沢山のご返事を頂きました。自分では気がつかないけど当社の商品はこんな使われ方して喜ばれているんだ、実はこういう所をお客様は見てくれているんだな、そういう事なら販促物のキャッチコピーをこう変えてみよう。全く新しい切り口で商品や販促物の改良が出来たりもします。更に喜びの声が届くたびに会社全体でモチベーションが上がったりもします。その声を年間でまとめて「お客さんの声大賞!」として記念品を贈ったりしてもいいですよね。入賞したりしたお客様は大ファンになってくれます。こうやってファンを増やしていけるのです。クレームは聞かないのか?勿論聞きます。本当にクレームがあるお客様はすぐに連絡が来るか、この喜びの声にも必ず書いて来ます。それはすぐに最優先で対応をします。


 でも、どうしても5段階方式でやりたい方、その場合はお客様を限定して行います。良く使ってくれるお客様、たまにだけど高額商品を買って下さるお客様、DMや案内に敏感に反応してくれるお客様、要はターゲットを絞るのです。こういうお客様こそ来て頂きたいという方に限定して聞いてみるのです。きちんと趣旨を書いたお手紙を同封して送れば結構答えてくれます。これを元に商品の改良やサービスの改善を行ったりします。この後者のアンケートは期間限定で行った方がいいですね。


 商売はお客様の言う事を聞いて奴隷のようにお客様に尽くす事が目的ではありません。誰の為にやるのか、自分の為か、お客様の為か、従業員の為か、株主のためか、仕入先の為か、家族の為か、どれか一つに極端に比重をかけるとどこかが歪む事になります。経営者はこの5つのバランスを自分なりに考え、会社も自分も居心地がいい組み合わせにする事がとても大切だと思います。


今年も貴方と貴方の大切な方に良い事が、良い事が、良い事が、一杯、沢山、大盛り、メガ盛りでやって来ますように心よりお祈り申し上げます。

 

平成27年 正月

 

  
 
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