中央区には事業所が約4万社あります。そこで働いている人は72万人に上ります。商売が上向きになればこの72万人の人が幸せになれます。私の役目は中央区の企業や働く人が幸せになるお手伝いをする事です。
起業、廃業、倒産、第2創業、バブル、事業承継、相続、これら全てを事業の現場で体験した屈指のコンサルタント「岩田剛三」が体験を通して感じた商売や生き方のコツを皆さんにお話しします。

 

 その日は初の社員集会が行われ、80名程の社員が全員集まり経営陣が来るのを今や遅しと待ち続ける中、突然ドアが開く大きな音がして経理部長が息せき切って飛び込んで来た。
「え~、只今銀行から連絡があって当社は2回目の不渡りを出しました。よって銀行取引停止となり…。要するに倒産です。かなり危ない筋からもお金を借りているので、間もなくその筋の人が押し掛けて来ると思われます。今やりかけの仕事の原稿や資料、写真のネガ、ポジを持って大至急会社から退去して下さい。」

 

 約5秒程だろうか、もっと長かっただろうか一瞬の静寂の時があり、その後鳥の群れが飛び立つように全員が席を立ち、自分の机とキャビネットへと向かった。私も2つ上のフロアの8階にあるデスクにむかい机から必要な資料を取りだし、キャビネットから大量のネガ、ポジを取りだし、大きな紙袋へ詰め込む。その間にも怒声が飛び交い「あの資料はどこへしまった!?」「君、最新のフィルムも持ったか?」「それをどこまで持っていくんっすか?」「誰かスタジオへ行って来い!」とにかく必要なもの、必要と思われるものを詰めるだけ詰めた大きな紙袋を両手両脇に抱えた入社2年目の私は行く宛てもないまま銀座の並木通りを8丁目方から4丁目へ向かって全力疾走した。

 地下鉄銀座駅のコインロッカーにそれを預け、地上に出てみると大勢の人が行き交ういつもの銀座だった。呆然とした気持ちで空を見上げると青く澄み渡り太陽が燦然と輝いていた。僕は一人つぶやいた。「これからどうしよう!?」

 これは実際に私が体験した倒産劇の一コマです。会社が潰れると多くの人の人生が狂います。その後社員達はどうなったか、なんでこんな事になったのか、記憶を整理しながら当時の思い出話も交えながら次回お話をしたいと思います。乞うご期待を!?

 

 貴方と貴方の大切な方が、いつも幸せでありますように…。

 

平成28年 弥生

 

  
 
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