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中央区のお医者さん

2005.9月号
 

お熱 -小児科の観点から-

 小児救急外来を受診される3分の1以上の患者さんは、発熱を心配されて受診されます。今回は、解熱剤の使い方も含め、子どもの発熱、とくに急な発熱時の対応に焦点をあててお話をさせていただきます。

 

 

Q. 何度以上を、発熱といいますか?

  A. 体温は、個人差があり、一概には言えません。通常、37.5℃以上を発熱のひとつの目安にはしていますが、お子様の平熱からも判断してください。
  Q. 平熱とは?
  A.  体温は、一日の中でも、周期があり(概日リズム)、朝低く、夕方にかけて高くなります。運動・入浴・授乳・食事の前後でも、変わってきます。赤ちゃんの場合、厚着や暖房などの影響で、高くでることもあります。 元気なときに、一日4回(朝・昼・夕方・寝る前)、食事前の安静な状態で体温を測り、平熱がどのくらいかを知っておくとよいでしょう。平熱より、1℃以上高ければ、熱があるといっていいでしょう。
  Q. 体温計は、いろいろありますね。
  A.  電子体温計、耳式体温計そして水銀体温計があります。
  Q. 測定場所や使い分けは、どうすればよいですか?
  A.  水銀体温計は、正確ですが、5分以上はさんでおくことが大切です。
電子体温計・耳式体温計は、短時間で測れて便利ですが、多少高く又は低くでることがあります。
測定場所は、日本では脇の下が一般的です。乳児は、あごの下でも測れます。汗ばんでいないか確認してから、測るようにして下さい。肛門計を用いるとより正確な体温がわかりますが、わきの下より0.5〜1度高くなります。
一日に三回ほど体温を測りグラフの形にして受診すると、経過が分かりやすく、その熱型が診断の助けになります。
  Q. 子どもの発熱の原因は何ですか?
  A.  多くの場合、感染による発熱です。感染以外にも、熱射病・日射病、脱水症、白血病等の悪性腫瘍、川崎病等から、恐怖や不安といった心の反応からの発熱にいたるまで、いろいろな原因があります。
  Q. 感染による発熱が多いということですが、病原体が侵入するとどうして、熱が上がるのですか?
  A.  体温は、熱産生と熱放散のバランスで、調節されています。
ウイルスや細菌などの病原体が体の中に侵入して来た時に、免疫系の細胞が働き、サイトカインという物質が産生されます。サイトカインは、体内のプロスタグランジン産生を促がし、プロスタグランジンが、脳の視床下部というところにある体温調節中枢に作用します。プロスタグランジンの量に応じて、セットポイントという体温設定が上昇します。そして、視床下部から、熱を産生する指令を筋肉に送る一方、熱の放散を抑制する指令を皮膚に送ります。

熱産生の筋肉運動は、悪寒のふるえ(戦慄)としてみられます。皮膚では、鳥肌が立ったり、発汗が抑えられ、血管が収縮し血液の量が減るため、手足が冷たく蒼白にみえます。

体温が上昇し、セットポイントまで達すると、この体温で体温調節が行われ、高体温が維持されます。高体温維持の段階では、余分な熱を放散するために皮膚血管が拡張し、発汗も起こります。この時手足はあたたかくなります。
  Q. 発熱時、悪寒にともなうふるえや、手足が冷たくなる理由がわかりました。
  A.  このような発熱の機序から言えることとして、熱の出始めは温かめに、熱が出きったら涼しくして頂きたいと思います。
  Q. 「子どもの発熱の時は、布団や着物をたくさん着せて汗をかかせる」という風な昔ながらのやり方は、正しくないのですね。
  A.  一概には正しいとはいえないわけです。熱が上がりきっているときに、布団や着物をたくさん着せていると、体温を必要以上に上昇させ、汗をたくさんかくことになり、脱水を起す危険性があります。
着物・掛け布団の調節や、エアコンで部屋の温度を調節するなりして、暑そうなら涼しく、寒そうなら温かくこまめに調節してあげてください。着替えもこまめにしてあげてください。
  Q. 高熱で頭がおかしくなることは、ありませんか?
  A. 幼児では、39度以上の発熱は、めずらしいことではありません。しかし、脳内には体温上昇を抑制する物質(解熱性ペプタイド)が安全弁として働くため、通常の発熱では、体温は、41.5℃を越えることがないようになっており、脳障害はおきません。脳障害が起こるのは、髄膜炎・脳炎など脳自体に発熱の原因がある場合です。
  Q. 病原体との戦いのための発熱であるというのであれば、あまり解熱剤は使用しない方がよいのですね。
  A. そうです。解熱剤は、決して、病気自体を治す薬ではありません。高体温下ではウイルスや細菌に対し、有利に戦えるのです。但し、高熱になることで、不利益も生じます。食欲低下、飲水減少、発汗などから脱水になったり、体力が消耗したり、本人が辛いことなどの不利益です。これらの不利益に対する対応を考え、発熱に対処します。
  Q. 具体的には?
  A. まず大切なことは、脱水を避けることです。水分を多めにとるように心がけてください。
食事の方は、食べられなくてもかまいません。感染に対する一連の防御反応として、食欲がなくなること、眠くなることが起こります。無理な食事の強制はマイナスになります。
体力消耗や、本人の辛さをとるためには、体を冷ましてください。首すじ、脇の下、ふとももの付け根など、太い動脈が走っているところを冷やすと効果的です。
氷枕、氷のう、冷えたタオル、冷却剤などで頭を冷やすことは、解熱の効果自体は少ないのですが、“気持ちがよい”ので、してあげてもよいです。子どもが嫌がるなら、無理に冷やす必要はありません。
ぬるま湯のおしぼりで体を拭いて緩やかに体温の放散をはかる方法もあります。
あとお風呂については、熱が高くて辛い時はだめですが、元気であったり、一時熱が下がった時など、お風呂に入り、さっと汗を流すことは構いません。
  Q. 解熱剤は、どのように使えばよいのですか?
  A. 何度も言うようですが、解熱剤は、病気自体を治す薬ではありません。高熱でも元気そうにしているのであれば、いりません。眠っている子を起してまで使う必要もありません。
38.5℃以上で、「辛そう」な場合に、アセトアミノフェン(場合によってはイブプロフェン)を使います。これら以外の解熱剤は、使わないようにして下さい。
一度つかったら、6時間以上あけて次を使います。発熱時の頓用が基本です。
  Q. 子どもに使って安全な解熱剤を選ぶ必要があるのですね。
  A. その通りです。アセトアミノフェンでさえ、肝臓への負担をかける副作用がありますので、医師の指示に従って使ってください。そして必要最小限に使ってください。
アスピリンは、過去において解熱剤としてもっとも多く使用されましたが、1980年代にReye症候群(急原因不明の急性肝脳症)との関係が知られて以来、小児に使用されなくなりました。同様に非ステロイド系抗炎症剤としてイブプロフェン以外のジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、メフェナムサン(ポンタール)、インドメタシン(インダシン)もインフルエンザ脳症・脳炎との関係が濃厚であり、小児には解熱剤として使用しません。
なお、アセトアミノフェンは、視床下部の体温中枢に作用することで熱を下げます。非ステロイド系抗炎症剤は、プロスタグランジンの産生を抑えることで熱を下げます。
  Q. 最後に、夜間に発熱した場合の、救急受診のタイミングを知りたいのですが、高熱の場合は、病気も重症と考え、救急受診すべきですか?
  A. 必ずしも高熱だから重症とは、限りません。
例えば、突発性発疹は、39度以上の熱をとるものの比較的元気です。逆に、熱はあまりなくても、顔色が悪く、反応が鈍く不機嫌な時に細菌性髄膜炎だったりもします。
  Q. では、発熱の場合の、夜間救急受診のタイミングを、どのように判断すればよいのですか?
  A. まず、生後6ヶ月未満とくに生後3ヶ月未満の発熱は、すぐに救急受診する必要があります。髄膜炎、敗血症など重症の感染症の可能性があるからです。
6ヶ月以上の小児の場合は、発熱以外に、以下に上げる場合は、救急受診してください。
1) 普段と比べ機嫌が悪い、活気(元気さ)がない
2) 水分を取らず、おしっこが出ない
3) よく眠れない(ウトウトしている)
4) 重い症状(意識がへん、けいれん、呼吸がへん、何度も嘔吐、ひどい咳、顔色がわるい、唇や手足・爪の色が青紫がかる(チアノーゼ)等)がある
5) なにか、いつもとちがう
すべての状況は、書ききれませんが、最後にあげた親御さんが「おや?いつもとちがう。」と感じる場合は、救急受診してください。
逆にいえば、「活気がある」「よく水分がとれている」「よく眠れる」という状況で発熱のみや、発熱と風邪症状(鼻水、鼻づまり、軽度ののどの痛み、軽い咳など)のみであれば、いそいで救急受診する必要はありません。
また、突然の夜の発熱があったが、一夜あけ解熱していた場合でも、必ず一度かかりつけ医を受診することをお忘れなく。午後から夕方にかけて再度発熱し救急受診ということになりかねませんので、詳しい検査などがすぐにできる通常時間内での受診を是非心がけてください。
最後に、子どもは、年に5〜7回ほど熱を出したり、風邪をひいたりしますが、風邪をひいて、ひとつひとつ免疫をつけていき、小学校に上がる頃には、強い体になります。それをしばらくは待ちましょう。お大事に。

 
小坂先生
小坂 和輝
(こさかかずき)
智弁学園和歌山高校・広島大学を卒業し、聖路加国際病院小児科、東京女子医大循環器小児科学教室を経て、現在中央区月島で小児科専門クリニック(病児・病後児保育室を併設)を開業。中央区医師会理事。抗生物質の適正使用、児童虐待、ドメスティック・バイオレンス、少年犯罪、メディア・リテラシーについてNPOと連携して取り組む。本人は社会企業家でありたいと望む。小一と3歳の2児の父。趣味は株・飲むこと・走ること。

小坂こども元気クリニックホームページ


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2005年9月掲載記事  
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