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中央区のお医者さん

2008.4月号
 

乳幼児突然死症候群

 十年ほど前に比べると、発祥が減っている乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)。しかし、まだまだ、乳児に占める死因では第3位と高い割合を占めています。
  厚労省は、平成11年度より、11月を乳幼児突然死症候群対策強化月間と定めました。その疾患の社会的関心の喚起と、重点的な啓発活動がなされ、疾患の予防に関する取組みがなされ、病気でなくなる乳児は減少しています。
  まだまだ、原因解明がなされていない疾患ではありますが、予防に関する情報も含め解説いたします。

 

 

Q. 乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)とは、どのような病気ですか?

  A. それまで元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく、眠っている間に突然死亡してしまう病気です。
 主として、一歳未満の乳児に起こります。生後2ヶ月から6ヶ月に多く、まれには1歳以上で発症することがあります。
 定義では、「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群。」とされています。
 診断は、剖検および死亡状況調査に基づいて行われます。
 診断にあたっては、乳幼児突然死症候群以外に突然の死をもたらす疾患および窒息や虐待などの死因(外因死)と区別する必要があります。

  Q. 日本では、どれぐらいの割合で起こっているのですか?
  A. 発症は年々減少傾向にはありますが、平成18年(2006年)においては全国で194人の赤ちゃんがこの病気で亡くなっており、1歳未満の乳児の死亡原因の第3位となっています。
 発症は、出生4000人に1人と推定されます。

※日本の人口動態統計によれば、平成17年(2005年)には、196人が乳幼児突然死症候群で亡くなっています。その内174人(88.8%)が1歳未満の乳児期でした。
 乳児期の死亡原因としては
第1位「先天奇形、変形及び染色体異常」1025人
(出生1000あたり0.965、乳児死亡の34.7%)、
第2位「周産期に特異的な呼吸障害及び心血管障害」414人
(出生1000あたり0.390、乳児死亡の14.0%)
第3位「不慮の事故」とならんで「乳幼児突然死症候群」174人
(出生1000あたり0.164、乳児死亡の5.9%)
第5位は、「胎児及び新生児の出血性障害及び血液障害」159人
(出生1000あたり0.150、乳児死亡の5.4%)

  Q. 原因はどのようなことでなるのですか?
  A. 平成19年(2007年)現在発症原因は、まだ解明されていません。
 睡眠時におこる無呼吸から回復する防御機構である覚醒反応が何らかの理由(未熟児・感染・気道の狭窄など)で遅延すると、ますます低酸素状態となり、呼吸が抑制され、悪循環に陥り死亡する、つまり、脳における呼吸循環調節機能不全が原因であろうと考えられていますが、単一の原因で起こるかどうかの点も含め、未だに不明です。
 従来から、発症リスク因子として、妊婦および養育者の喫煙、非母乳保育、うつぶせ寝などが挙げられています。
 早産や低出生体重の乳児、秋から早春にかけての寒い季節に発生が多いとの報告もあります。

  Q. どのようなことに注意する必要がありますか?
  A. いくつかのことを注意することにより、この病気の発症率が低下することが研究により明らかになっています。
 乳幼児突然死症候群(SIDS)対策強化月間を開始した平成11年度以降、この病気で亡くなる赤ちゃんの人数は着実に減少しています。
 以下の点をご注意下さい。

(A)赤ちゃんを寝かせるときは、あおむけ寝にしましょう。
 うつぶせに寝かせたときの方が、あおむけ寝の場合に比べて乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症率が高いということがわかっています。うつぶせ寝が乳幼児突然死症候群(SIDS)を引き起こすものではありませんが、医学上の理由でうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせるようにしましょう。
 また、硬い寝床にし、呼吸の妨げとなる柔らかい寝具で眠らせないようにしましょう。乳児の頭が、寝具や帽子などで覆われないようにしましょう。
 乳児と一緒のベッドに眠るのもやめましょう。発症の危険性だけでなく窒息死の危険性も高めます。

(B)できるだけ母乳で育てましょう。
 母乳は、発症の引き金となるような感染症を防ぐのにも役立っており、母乳による育児が赤ちゃんにとって最適であることは良く知られています。人工乳が乳幼児突然死症候群(SIDS)を引き起こすものではありませんが、できるだけ母乳で育てるようにしましょう。
 ただし、母乳の出方には個人差があり、母乳分泌不足である場合人工栄養ミルク(特に出生直後から数日間)を使用することは、構いません。

(C)妊娠中や赤ちゃんの周囲で、たばこを吸わないようにしましょう。
 たばこは、乳幼児突然死症候群(SIDS)発症の大きな危険因子です。
 家庭内で環境中にたばこの煙に暴露されている乳児は、暴露されていない乳児に比べて、発症の危険性が2倍です。また、妊娠中に喫煙していた母親から生まれた乳児は、妊娠中に喫煙しなかった母親からの乳児に比べ、発症の危険性が3倍です。
 妊婦自身の喫煙はもちろんのこと、妊婦や赤ちゃんのそばでの喫煙もよくありません。妊娠したらたばこはやめましょう。身近な人の理解も大切ですので、日頃から協力を求めましょう。

(D)暖まり過ぎないようにしましょう。
 上記、3つ以外に、うつぶせ寝で下向きの顔や頭が寝具でおおわれたりすると熱が逃げ出しにくくなり熱が体内にこもることになります。暖まりすぎると発症の危険性が高まるという報告もあります。

  Q. 乳児が突然死亡した場合、過失や犯罪による死亡なのか、さけられない疾患による病死だったのかについて、しばしば問題になります。
 

A. 欧米諸国では、厳密に解剖(剖検)によって呼吸器や神経系などの器質的疾患を除外した後にSIDSの診断を行うが、日本では解剖の習慣はあまり定着しておりません。以前は、剖検の行われないままにSIDSと診断されるケースも多くありました。
 そのため、事故や虐待を隠すことになっているのではないかという指摘がしばしばなされていました。
 SIDSの診断をめぐっての訴訟も日本を始め各国で発生しております。それらの大半は、SIDSと診断されたが、遺族が納得せず、窒息死などではないかと反論するケースです。
 SIDSと診断された後に、乳児虐待の事実が判明するケースなどもあります。
 また、遺族は単なる悲しみだけではなく、何とか予防できたのではないか、という罪の意識に苦しむことがほどんどであり、遺族の心のケアも重要です。


以上、
(参照)
※平成18年11月、厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)「乳幼児突然死症候群(SIDS)における科学的根拠に基づいた病態解明および予防法の開発に関する研究」(主任研究者:戸苅創名古屋市立大学大学院教授)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken06/index.html
「診断フローチャート」や「問診・チェックリスト」等を含む「乳幼児突然死症候群(SIDS)の診断の手引き」を公表されている。

※平成17年3月、厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)「乳幼児突然死症候群(SIDS)の診断のためのガイドライン作成およびその予防と発症率軽減に関する研究」(主任研究者:坂上正道北里大学名誉教授)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/04/h0418-1.html
乳幼児突然死症候群(SIDS)に関するガイドライン

※横浜市衛生研究所 乳幼児突然死症候群(SIDS)について
http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/health_inf/sids1.htm

※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 乳幼児突然死症候群(SIDS)

※久保田産婦人科麻酔科医院 乳幼児突然死症候群(SIDS)
http://www.s-kubota.net/main/book11.htm


 
小坂先生
小坂 和輝
(こさかかずき)
智弁学園和歌山高校・広島大学を卒業し、聖路加国際病院小児科、東京女子医大循環器小児科学教室を経て、現在中央区月島で小児科専門クリニック(病児・病後児保育室を併設)を開業。中央区医師会理事。抗生物質の適正使用、児童虐待、ドメスティック・バイオレンス、少年犯罪、メディア・リテラシーについてNPOと連携して取り組む。本人は社会企業家でありたいと望む。小一と3歳の2児の父。趣味は株・飲むこと・走ること。

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2008年4月掲載記事  
※内容は、掲載当時のものとなります  
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