平成16年3月、明石町の第二中学校跡地に22階建ての建物が完成しました。

2階から4階は介護老人保健施設「リハポート明石」、1階の一部と5階は知的障害者生活支援施設「レインボーハウス明石」、6階から22階は独立行政法人 都市再生機構の高層賃貸マンションの「ラ・ヴェール明石町」と、主に3つの異なる用途の複合した建物です。

7月にオープンした「リハポート明石」と「レインボーハウス明石」は、ひとつの建物に介護老人保健施設と知的障害者の施設があるという全国でもめずらしい例で、都内の各区はもちろん全国から注目されています。

「リハポート明石」と「レインボーハウス明石」の玄関口となる1階のふれあい広場には、日本画家であり文海中学校(第二中学校の前身)の卒業生の小川幸治さんによる中央区の懐かしい風景を描いた陶版壁画が飾られています。


建物断面図


1階ふれあい広場

■ 介護老人保健施設「リハポート明石」

リハポート明石は中央区が設置し、(社)中央区医師会が運営に携っています。リハポート明石の武藤施設長に施設や活動の特色についてうかがいました。

リハポート〜力をつけて港から家へと帰っていく


武藤施設長

老健施設はリハビリと介護がメインです。自立するにはまだ少し早いとか、家の方も退院させるにはまだ自信がないというようなときに、リハビリをして、看護や介護を受け、自立して家に帰るという施設です。リハポートとは、リハビリの「リハ」とサポートもしくは港の「ポート」をあわせた造語です。入所された方は、港(ここ)から必ずご家族のもとへ帰っていくという意味です。

お年寄りにとっては、ご自宅でご家族の皆さんと一緒に生活されるのが、一番よいことだと思っています。しかし、仕事があるなどの事情で、お身体の不自由なお年寄りのケアができない場合もありますので、こちらで一時的にお年寄りをお預かりして、リハビリにより少しでも身の回りのことを自分でできるようになれば、ご家族の方も安心して外出できるようになると思います。

高齢化社会を見据えた新しい老人保健のあり方

老健施設に入らなくてもすむように、力の落ちてきた人たちを丈夫にする、あるいはリハビリによる機能回復で介護度を元に戻していくといった、全体的な老人保健の考えが出てきました。ご存知の通り、これから10年20年後は戦後のベビーブームの年代が70歳80歳に入ってきますので、大変な高齢社会になりますから、できるだけ不自由のない方を増やしていこうという構想です。

こうした流れを受け、中央区では、来年度から、高齢者の方々の介護が必要にならないように介護予防プログラムが展開されていく予定ですが、介護が必要となった高齢者については、こちらの老健施設に来ていただき、リハビリ等を通じてパワーアップを図り、自立した生活を送ることができるように、お手伝いをしていきたいと考えています。

パワーリハビリで心もリハビリ


訓練室


パワーリハビリマシン

医療用トレーニングマシンによるパワーリハビリが、最近話題になっています。当施設でもこのマシンの導入を進めてきました。スポーツジムにある筋力アップの機械をもとに高齢者の筋力にあわせ、細かいグラム数から設定できるよう改良しています。

手や足が不自由だったり、伸ばすのが不自由だったりと、それぞれに機能の不全がありますから、それぞれの機能回復に6つのタイプの運動ができる機械を設置しています。パワーリハビリによって筋力アップはもちろん、大きい機械を自分で動かすことができるの自信をもつことによる気持ちのアップも期待しています。心身ともに力をつけて、在宅復帰へとつなげるということが大きな目的です。

一般に、リハビリというと硬くなった筋肉をほぐしたり、マットの上に寝てマッサージしたりとか、電気をかけるとかなどをイメージされると思いますが、最近はそういうもの以外に、パワーアップや心のリハビリということを手がけているのです。リハビリによって歩けるようになった自信が、自分の目的を持って新たに挑戦していくという前向きな気持ちをサポートしていくことになれば、元気なご老人が増えて、いい人生を送っていただくことで、さみしい終末は迎えるようなことがなくなっていくと思っています。

地域全体の連携を

まだオープンして4ヶ月ですが、やっとスタッフが慣れて来たという状態で、そろそろセカンドギアを入れて、地域との交流を広げていこうと考えています。

今は所内の職員だけで活動していますが、いずれはこの施設を利用するかもしれない地域の方々とも一緒に活動し、その方々の参加を通じて、この施設の理念をアピールすることにより、自分達の区で行われている保健、福祉の活動を知っていただけると思います。これからは地域全体の連携がとても大事になっていくと思っていますので、地域との交流をどんどんやっていきたいと思います。

小学生との交流で相乗効果を期待

隣接の明石小学校との間には、どちらからでも入れるスペースが設けられています。そこで、小学生と一緒に野菜を作ることなどを考えています。オープン前には小学生たちがこの施設を見学に来てくれたこともあり、今後は敬老会など、様々なイベントに参加していただき交流をしていきたいと思っています。

今はおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に生活していないご家庭がほとんどですから、小さいうちからお年寄りとふれあい、お年寄りはどういう生活をし、どういうような人なのかということを学び、尊敬の気持ちを持ってもらうことが、子どもたちがこれからの社会に立ってゆく上で大事なことだと思います。そのために交流を増やしていきたいと思っていますし、小学校からも期待をもっていただいています。特に今の時代はいろいろとすさんだ事件も多いですから、子どもの育成の手助けになるのならば大いにやっていきたいと思っています。

小学生は、施設の皆さんのお孫さんか曾孫さんくらいの年齢になりますので、心が和むのでしょう、元気が出るようです。ここには、ご家族の方が毎日のようにいらしています。本当にたくさんのかたに来ていただき、素晴らしいなあと思います。時にはお孫さんがいらしたりすると、入所者の表情は全然違います。そういう意味でも小学校の人たちが関わっていってくれるのは、お互いにプラスになることだと思います。

地域への理解を深めるために−

自分自身の体験で実感しているのですが、介護保険というものがどういうものであるのか、どのように利用すればよいのかなどを入所者やご家族さらに職員も含めてお互いに勉強しあうことが大切だと思います。他の所では、制度としてこうなっていますと話しても、聞いていませんといわれて、トラブルのもとになっているということも聞いています。当施設では入所される方に、「機能回復、在宅復帰のための施設です。そのため3ヶ月で一回退所してもらいます。」ということなど説明し、お年よりを預けっぱなしにする施設ではないということを、職員からゆっくり説明をしています。

そして、退所したらさよならということではなくて、当施設の相談員や1階にある在宅支援センターや訪問介護ステーションと連絡をとって、介護度にあったサービスをしていくにはどういう風にすればいいのかということを相談していただきたいと思います。

このような活動を通じて帰られる方も、引き受ける方も幸せに毎日が過ごせるための保健福祉のあり方を考えていきたいと思っています。そういうことをいろいろなイベントなどを通じてアピールしていく、あるいはボランティアの方がたくさん来ていただくことによって、自然に理解していただくようになって、それを区民に広げていくことが大事だと思っています。

■ 知的障害者生活支援施設「レインボーハウス明石」

レインボーハウス明石は、18歳以上の知的障害者を対象に、地域の中で自立した生活ができるよう居住の場を提供するとともに、日常生活における指導や活動を行うことにより、本人の自立促進を図る施設です。また、1階にある喫茶店アラジンでは、働く障害者と地域の人々とが自然に触れ合う交流の場となっています。

レインボーハウス明石は中央区が設置し、社会福祉法人東京都知的障害者育成会が運営に携っています。レインボーハウス明石の笹谷施設長に施設や活動の特色についてうかがいました。


笹谷施設長

「ここから始まる自分スタイルの新しい暮らし」

知的障害者が本当に心地よく生活ができる場所ということを一番に考えています。例えば入所のご案内は、マンションの入居のご案内と同じようなものを作ってお配りしています。

「ここから始まる自分スタイルの新しい暮らし」をテーマに、彼等がここに入所し、自分がこれからどういう風な生活をしたいのかということを考える場にしたいと思っています。

ですから、できるだけ施設自体は清潔で住みやすい場所にしていきたいと思います。そして、本人たちの意思を尊重し、いろいろなことに取り組んでいきたいと思っています。

喫茶店アラジン


1階アラジン

入居する障害者の多くは、ここでずっと生活するのではなく、地域の中に出て生活することになると思いますので、地域の人たちにも彼等のことを理解していただきたいと思い、1階に喫茶店アラジンを作りました。

プロのパン職人にお願いして焼きたてパンやケーキをつくり、入所者がパンづくりの手伝いや喫茶サービスを行っており、この施設の目玉となっています。彼等が自然に働いている姿を地域の人が目の当たりにすることで、啓発運動にもなりますし、彼等自身が輝いて仕事ができる場にもなっていると考えています。

アラジンのワンコイン(500円)ランチは非常に好評で、お昼の時間は座れないくらいの人が来てくれます。近くのビジネス街の人たちも喜んで利用していただいています。こうした中で障害のある方たちと触れ合っていただける機会が自然に作られていくというのが一番いいと思います。

自立のための多くの取組み


工房


レインボーハウス明石が所有する
羊の「たけし君」

フロアは5つの生活空間(ユニット)に分かれていて、各利用者の居室は全て個室になっています。自分が住んでいる所は、自分たちで綺麗にしていこうと言う事で、クリーン班が掃除をしています。そのなかで自立のための作業活動や創作活動をしています。

30人の入所施設としては、かなり作業の種類は多いと思います。日中はクリーン工房、クリーニング工房、機織り工房、陶芸工房、ベーカリー工房の5つの工房と喫茶店に分かれて活動をしています。最近ではビーズアクセサリーづくりなども始まりました。

最終的には自立を目標としているので、コストを意識して本格的に取り組んでいます。例えば機織りでは、羊の「たけし君」の原毛を仕入れてきて、それをまず洗って、染色して、紡いで、糸に張っていくというやり方も始めようと思っています。

明石小学校を始めとした地域との交流

隣の明石小学校との交流も大切なテーマです。共有の畑での作業のほか、パン作りやケーキ作り、機織り、陶芸などの作業活動においても、小学生との交流を考えていきたいと思い、話し合いは始まっています。

喫茶店アラジンを中心に、いろいろな人たちがこの施設に目を向けていただくことが出来たと思います。さらに、リハポート明石と6〜22階の居住スペースの住民の方たちともうまく交流していきたいと思っています。

都心の一等地にある施設なので、地の利をうまく生かしていろいろな活動ができればと、かなり外に多く出て行ける活動も行っています。オープンしてすぐに、築地本願寺や明石町の町内会の盆踊りにも参加しました。また、月島の草市、大江戸まつりなどにも参加し、地域の方とも積極的におつき合いをしていこうとがんばっています。

障害者の生活の場と就労の場つくり〜夢は中華屋さん、イタリアンレストランの経営


入居案内

「自分スタイルの新しい暮らし」というのを、職員と利用者と家族と一緒に考え、地域にグループホームを作り、そこで生活していくという形ができればいいと思っています。

たとえば、都内は土地代が高いですから、いろいろな形で行政にお手伝いしていただき、区立や都立の住宅の中などに、グループホームを作ることが出来ればと思います。
また、グループホームではなくて、民間のアパートなどで生活をしてそれをトータル的にケアするというような形も、中央区独自のやり方として作っていかなくてはいけないと思っています。

今、グループホームで生活をするには、年金だけでは3万円くらい不足し、公的資金にプラスして7万円から10万円のお金があるとのびのび、いきいきと生活していけるので、10万円を目標としています。喫茶店アラジンやベーカリー工房で働いている人が地域で生活を始めたときには、それが支払える場所となって彼等を受け入れられるようにしていきたいと思っています。

将来の夢は限りなくあるのですが、グループホームを作ったその次の事業展開としては、障害者が働く場として、フランス風の中華屋さんとか、イタリアンレストランを経営したいと考えています。中華屋さんで4人の人たちに10万円くらい給与を払える就労の場を作り、次に4人のグループホームを作り、イタリアンレストランでまた4人くらいの人に10万円くらい払えるというように、生活の場と一緒に就労の場を作っていきたいと考えています。

また、知的障害の重い人も、ここからグループホームへ出た場合には、日中活動の場が必要です。その時には、ここにある陶芸や機織りなどのシステムをうまく活用し、ここにディサービス事業が付加されれば、かなりの人たちが外で生活していけると思います。収益が得られるようになれば、知的障害の重い人がここに働きにくるということができ、ひとつの支援のシステムという形になると思います。

レインボーハウス明石を障害者の生活の場と就労の場を支える拠点に

グループホームがひとつひとつ独立してあるのではなく、それを3つくらい作り、今あるグループホームなどをグループ化しスーパーバイザーを配置して、レインボーハウスが支えていく形ができれば一番いいと思います。こういう形はスウェーデンなどでは実際にもう出来ています。いくつかのグループホームをバックアップしていくという形を日本でもやっていきたいと思います。

今までのグループホームは、一人の世話人さんに全てまかせて、あとは支援者がいるという形ですが、やはり、ひとりではなくて複数の支援者がひとつのグループホームに関わるという形をきちんと作っていければいいと思います。

ここに入所された人たちの将来は、私たちが一緒に夢を語り合いながら作っていきたいなと思っています。それができるのが、中央区だと思います。将来に対して一生懸命考えていきたいという区なので、展開していただけると思っています。中央区の行政に期待しています。