このコーナーでは、中央区にあり、区が所管する特色ある複合施設を紹介いたします。
今回は、前回の「京華(きょうか)スクエア」に引き続き、関東大震災後の「復興小学校」を再利用した複合施設「十思(じっし)スクエア」をご紹介いたします。

■ 関東大震災後の復興小学校を再利用した複合施設「十思スクエア」


十思スクエア

「十思スクエア」は、日本橋小伝馬町にある旧中央区立十思小学校の校舎を改修・整備したもので、区民サービスの複合施設として平成13年1月にオープンしました。

高齢化に対応した区民サービスと地域の方々の相互交流の場などに活用されています。「京華スクエア」が生涯学習の場であったのに対して、ここ「十思スクエア」は福祉の場として位置付けられています。

■ 十思小学校の歴史


関東大震災前の十思小学校

廃校直前の十思小学校

十思小学校校庭にあった「十思之疏」


嘉永3年 日本橋北の古地図


江戸伝馬町牢屋敷の模型


十思公園内にある吉田松陰縁の石碑


吉田松陰顕彰碑

吉田松陰終焉の地


吉田松陰辞世の句


十思公園前の時の鐘通り

石町時の鐘

旧十思小学校は明治11年に十思学校として開校しました。“十思”という名称は、開校当時の住所であった旧伝馬上町が第一大区第一中学区第十四小区に属する、つまり十四小区の学校であることからと、資治通鑑※1の「十思之疏※2の十思の語と音が通じるところから「十思小学校」と名づけられました。この「十思之疏」は人の主となる者の守らなければならない大道であって、申し分のない枚処世訓であり、十思小学校の校風にも反映されていていました。

※1資治通鑑(しじつがん):
宗の司馬光の著書。周の威烈王から五代の終わりまで、113主1362年間の歴代君臣の事跡を編年体に編纂した書。治世に利益があって歴代為政者の鑑(かがみ)とするに足る意

※2十思之疏(じっしのそ):
唐の名臣魏徴が、大宗皇帝にさし上げた十か条を列挙した、天子のわきまえなければならぬ戒め(以下参照)

見可欲則思知足 欲すべきを見れば則ち足るを知ると思う:欲しいと思ったときでも、足りれば十分であることを知って、いたずらに多くをのぞまないこと。
将興繕則思知止 将に興繕せんとすれば則ち止まるを知ると思う:工事などを起こすにあたっては、止めるべき程度を知ること。
処高危則思謙降 高危に処すれば則ち謙降を思う:高い地位にいる人ほど、へりくだるようにしなければいけないこと。
臨満盈則思ユウ* 満盈に臨めば則ちユウ*損を思う:みちみちている時には、心をおさえておごることがないようにすること。
遇逸楽則思ソン** 逸楽に遇いては則ちソン**節を思う:遊びくらすようなことは、ひかえて少なくするように心がけること。
在宴安則思後患 宴安に在っては則ち後患を思う:宴をはって楽しむときも、後にわずらいや心配があることを考えること。
防壅敝則思延納 壅敝を防ぐには則ち延納を思う:りっぱなよい帝王といわれるためには、かしこいけらいをもちいて、そのいましめを受け入れること。
疾讒邪則思正己 讒邪を疾むには則ち己を正すを思う:よこしまで、人をそしるようなことをにくむには、まず自分自身の言動を正しくすること。
行爵賞則思因喜而僣 爵賞を行うには則ち喜によって僣することを思う:位や賞を与える時には、喜びのあまり、分をこすようなことのないようにすること。
施刑罰則思因怒而濫 刑罰を施すには則ち怒によって濫することを思う:刑や罰を行う時には、怒ったあまりに、不適当な刑や罰にしてしまうことのないようにすること。

*本来の字は「手辺」に「邑」、「ユウ損」=自分の心を抑えへりくだるの意。
**本来の字は「手辺」に「尊の旧字体」、「ソン節」=へりくだるの意。

「十思スクエア」として生まれ変わった校舎は昭和3年に完成した建物で、それ以前は開校から度重なる火事などの災害により焼失しています。

新しい校舎になってからは、戦火をのがれ平成2年3月に廃校となるまで、多くの卒業生をおくりだしました。廃校後、生徒たちは日本橋小学校に統合され、小学校としての役割を終えた校舎は、日本橋特別出張所仮庁舎として使われた後、平成12年に改修工事を行い「十思スクエア」として生まれ変わりました。

また、この建物は関東大震災後の復興小学校の特徴(前回京華小学校参照)である公園を隣接しており、この十思公園にはこの地の歴史を伝える史跡があります。江戸時代伝馬牢屋敷がここにあったため、安政の大獄により処刑された吉田松陰関連の碑が並んでいます。これらは以前、十思小学校の校庭にあったものです。また、十思公園には江戸城下に時刻を知らせていた本石町(現、日本橋室町3丁目)の時鐘が移転されています。

■ 「十思スクエア」の主な施設


平面図(パンフレットより)

相談室


展示されている介護用品

デイルーム

皆さんの作品

体育館

菜園

●中央区日本橋在宅介護支援センター

寝たきり等で介護を必要とする高齢者または介護をされているご家族の方々のために、介護に関する各種の相談、助言、指導を行っています。また、介護保険のケアプランも作成しています。センター内には介護機器・用品が展示されていて、介護に関するあらゆる相談にわかりやすく対応しています。現在、来訪・電話相談は月に500件を超えています。
(中央区が日本橋医師会に委託している事業)

●十思デイルーム

在宅の虚弱高齢者等を対象に、要介護状態となることを予防するため、食事の提供、日常動作訓練、趣味等のいきがい活動を行う日帰り利用する中央区では始めての施設。現在24名が登録、3コースに分けて週2回、8名のグループを2名のスタッフで運営しています。デイルームの一日は、体操・リクリエーション、皆で昼食をした後は創作活動などを行いますが、時にはお花見や誕生会などで外出することもあります。

ここには十思小学校の卒業生や、お子さんが卒業されたと言う方もいらして、きれいに改修された校舎に懐かしい思いで通っていらっしゃるそうです。
(中央区が賛育会に委託している事業)

●医師会立中央区訪問看護ステーション

どんな障害や病気であっても、できる限り住み慣れた自宅で療養したいと望まれる高齢
者の方々のご家庭に、看護婦等が訪問し患者の症状に応じた適切な看護サービスの提供を
行っています。

●十思コミュニティルーム

町会・自治会活動や地域の方々の相互交流、会員の方々の趣味の活動など地域活動の場として利用できる地域自主管理型の施設。小規模な葬儀も執り行えます。

●体育館

地域の団体が行うスポーツ等について貸出をしています。天井の高さや設備の関係から、一部の球技スポーツ等には不可。

●菜園(水田・畑)

旧十思小学校をあわせて統合された日本橋小学校の生徒たちが農作物を作り、自然を体験する学習の場。小学校時代のプールに土を入れて作ったものです。一部デイルームでも使用しています。

その他の施設

町会が、地域活動のために利用する町会会議室(和室・洋室)、十思小学校の校友会が利用する校友会室、地域の文化財などを展示・保管する歴史資料室、倉庫、災害時に応急対策活動を行うための各種防災活動資器材を備蓄している防災活動資器材庫などがあります。

■ 十思小学校卒業生「十思スクエア」を語る


十思小学校校友会 菅原会長

昭和16年 理科室の授業風景

昭和29年 図工授業風景

十思小学校校友会の菅原会長は昭和18年3月に十思小学校をご卒業されました。菅原会長に在校時のお話をお聞きしました。

十思小学校は西洋風の贅沢な建物で、当時としては非常に設備の整った小学校だったそうです。例えば、図画室には自然光を採り入れる窓があり、理科室にはグループで座る机ごとに水道が設置され、茶道を習う畳敷きの作法室もありました。また、校庭のプールは中央区の小学校で最も早く作られたもので、周辺の小学校の生徒も借りにきたそうです。

母校の校舎が「十思スクエア」として生まれ変わったことについては、廃校が決定した後の十思小学校跡地をめぐり取り壊しの計画が出たときには、地域の方々や卒業生と共に「地域の人に役立つ施設として再利用したい」という反対の呼びかけを行ったそうです。その願いが通じ、「十思スクエア」は誕生したのです。

そして廃校後は統合された日本橋小学校内の十思小学校の資料や、日本橋小学校の資料が保管されているメモリアルホールで行っていた同窓会も「十思スクエア」のオープンにより、旧講堂(今の体育館)で開かれるようになり、菅原会長はじめ十思の卒業生たちは大変喜ばれたと言うことです。そしてなにより、自分たちの学び舎が多くの方々に役立つ施設として生まれ変わったことが十思卒業生の皆さんの喜びなのでしょう。

 



■ 各相談窓口へのお問合せ先

中央区日本橋在宅介護支援センター 月〜土曜日の9時〜18時  03−3665−3547
中央区十思デイルーム 月〜土曜日の9時〜17時  03−3666−0221
医師会立中央区訪問看護ステーション 月〜金曜日の9時〜17時  03−3666−2992
十思コミュニティルーム、町会会議室、
校友会室、歴史資料室
区民部 地域振興課 自治振興係  03−3546−5336
体育館 福祉部 児童家庭課  03−3546−5342

取材協力: 中央区役所
  日本橋小学校