市場審議会 豊洲新市場の基本構想を発表

 第57回「東京卸売市場審議会」が13日に開かれ、豊洲の新しい市場についての基本構想が明らかにされた。審議会の委員は昨年2月に任命されている。会長は引き続き高橋俊龍氏(元副知事)がつとめることになった。基本構想は築地市場の移転決定を受けて新市場のあり方をまとめたもの。取扱い量は現状を上回る程度としており、消費者など一般開放のコーナーを設ける。審議会では委員の矢田区長が従来の七つの疑問について質問し、都の見解をただした。一方、他の委員の発言では、都議会の委員から、足立や葛西の市場が豊洲の新市場によって「つぶれる」との見通しと危惧の念が示された。また十五年の長期間をおいて「孫子からとんでもないものを作ってくれた」と言われないようにと注文もつけられた。土壌汚染で消費者団体の代表委員は、都の情報公開が不十分であることに不満を示した。矢田区長と都のやりとりをまとめた。


再び7つの疑問を質す

 豊洲の土壌汚染
 

 矢 田 区 長
 衛生管理を推進させるという考えが示されたが、その前提として豊洲の土壌汚染が改良されていなければならないと思う。
 これまでの答弁にあったような、環境保護条令にもとづき環境局が東京ガスを指導しながら土壌改良に当たっているから問題ないそういうことでは都民の疑念は払拭できないわけで、現状での進捗状況を説明いただきたい。
 平成13年1月の審議会で、市場自体がチェックする機能をもつべきだ、と指摘があったが、その意味でも積極的な情報提供をいただきたい。

 東 京 都
 重大な関心をもって取り組んでいる。平成13年から処理が進められているが、区画整理事業が完了する18年度末までに完了して、土地利用が確保できると考えている。
 市場としても環境局と協議をして、関係区を初め消費者など都民にに十分な説明をしていきたい。



 豊洲での土地確保
 

 矢 田 区 長
 平成13年7月6日の豊洲移転に関する都と東京ガスとの合意の後、全地権者との最終的な合意があったのかどうか。その内容を明らかにしたうえで、44ヘクタールの土地確保するまでの手順を説明いただきたい。

 東 京 都
 東京ガスはじめ全地権者とは14年7月、市場移転にかかる合意文書に調印した。都と江東区などによる開発協議会で市場を織りこんだまちづくりを協議していきたい。



 交通アクセス問題
 

 矢 田 区 長
 現在の交通基盤整備計画は平成2年6月に策定されたもので、巨大な市場整備を前提にしたものではない。1日5万2千人の市場利用者、7万7千台の交通に見合った基盤整備に対応できるのかどうか。さらに環状二号線の延伸については、平成9年4月に改正された計画では27年目途に、その後12年12月に策定された東京構想2000では20年度完成と前倒しに、そして14年度に再改定された豊洲晴海整備計画においては平成20年から21年度という曖昧な表現に逆戻りしている。卸売整備計画との関連において、それぞれの計画がどのように整合がとれているのかどうか、それがわからない状態にあるし、都の財政がいちだんと厳しい中で、財源確保の見通しはどうなのか。

 東 京 都
 重要な課題と認識している。現在、晴海通り延伸、環二の有明・豊洲間、補助301号線については着工し、平成18年度の開通に向けて整備を進めている。環二は、昨年9月の豊晴計画の改正案で27年目途でなく、20年から21年度の整備目標をかかげている。これにともない関係局あげて工期の短縮を検討している。交通量は豊洲のまちづくりがあって若干の増加が予想されている。ピーク時のズレ等から十分に対応できると考えている。



 築地の場外・場内
 

 矢 田 区 長
 長引く不況の中で厳しい経営を強いられている。移転整備に当たって希望すれば皆さん方の場所が確保されるのか、また新市場での負担はどうなのか、様ざまな先行きの見えないことが多いが、こういった点はどうなのか。また、場内の仲卸などの合意形成はどうか。負担増にならないのか。さらに現市場があまりに軽んじられていることを危惧する。衛生対策は大丈夫か、災害時の食糧基地など防災対策も欠かせない。前回は必要に応じてと答弁しているが、これからの防災対策の予定はあるのか。

 東 京 都
 場外の最も組合員の多い団体については14年度に、現在の場所で活性化を目指す方針を決め、跡地利用ふくめ共に検討していく。移転を希望する方は研究会で検討することにしている。築地市場は移転までに15年もあるわけで基幹市場の役割を損なわないようにと、平成13年1月に市場協会で整備計画をまとめて低温施設などに着手している。使用料については、施設の規模、民活の枠組みなどが決まってから協議する。



 現市場の跡地利用
 

 矢 田 区 長
 現在の築地市場について都は、豊洲への移転費用を捻出するために原則として売却としている。現在地は隅田川や築地川の水辺にとり囲まれた親水性の高い場所で、しかも特別名所旧跡の二重指定を受けている浜離宮恩賜庭園に連結し、銀座や開発の進んでいる汐留と至近の距離にある。市場と共に歩んできた築地という独特な町は、食文化をしっかりと受けついでいる。様ざまな意味でポテンシャルの高い土地で、この21ヘクタールの都民の貴重な財産についてどのようなまちづくり構想をおもちか。また売却ということで、そうしたことが担保できるのか。

 東 京 都
 基本的には売却方針だ。しかしながらウォーターフロントの活用とともに東京全体のまちづくりにとっても貴重と認識しており、十分に区と協議していく。



4つのゾーニング  千客万来コーナーも
 

 目指すべき方向
 
これからの卸売市場は、取引規制や市場業者の許可制度、生産者重視の視点といった、これまで卸売市場を支えてきた仕組みを見直し、競争原理の一層の導入や消費者からの発想も重視した仕組みとすべきである。
 さらに、適正な受益者負担に基づく計画・効率的な施設整備や、多様な整備手法の導入など、市場の活性化を進めていく必要がある。

 築地の現状と課題

 築地市場は、青果・水産合わせて、年間100万トン、金額にして6千億円を取扱う我が国最大の中央卸売市場であり、都民の台所として重要なだけでなく、首都圏の広域流通拠点、全国流通の要の集散拠点としての位置を占めている。
 しかし、昭和10年の開場当時、都内600万人に供給することを目的に建設された現在の築地市場では、さまざまな課題を解決することはできない。

 新市場建設の必要

築地市場を、次世代までも見据えた首都圏の生鮮食料品流通の中核を担う市場へと再生するには、情報化、物流の効率化、衛生、環境対策の強化を実現する必要がある。
 また、生産者から消費者まで、食文化、食情報を発信できる機能や、「外食」「中食」の増加等、食生活の変化に対応できる加工・配送等の付加価値機能の充実が求められている。
 これらを実現するために、東京都は平成13年12月、「東京都卸売市場整備計画(第7次)」において、築地市場の豊洲への移転を決定した。

 新市場の取締規模

 <需要の見通し>首都圏の人口は、平成27年頃から漸減に向かうが、都心回帰の進展等で微減にとどまると予測される。
 一方、食料品の消費は外食、昼食への移行が進むが、人々の生鮮嗜考は維持されると考えられる。このため首都圏の生鮮食料品需要は、今後EO年程度は現在の水準が続くと予測する。
 <目標取扱量>新市場の取扱量は、市場の取扱量を増減させる流通上の要因を考慮し現在の築地市場の取扱量をやや上回る水準で設定することとする。
 なお、市場の取扱量水準は市場の競争条件の変化に応じて今後、さらに変化する可能性もある。
 施設規模の算定の基礎となる物流量については、仲卸業者の直荷引きや他市場向けの集散品等を加えて設定する。

 ゾーニング構成

 <考え方>流通ゾーンは市場本来の業務ゾーン、景観ゾーンは水と緑を生かしたゾーン、賑わいゾーンは都民・消費者に開かれた千客万来のゾーン。
 <流通ゾーン>市場づくりの基本となる部門構成については、従来の水産・青果・関連という業種別構成の是非や加工・配送部門・賑わいを創出する部門など市場機能の高度化のための新たな部門の設置を多角的に検討し、以下の各案等を基本に基本計画時に具体化を図る。

 流通の変化に対応

 <物流システムの効率化>食品衛生の確保、品質管理の向上、物流のスピードアップとコスト削減を図るため、卸、仲卸売場、搬出入バース等を一体的に配置し、建物内で物流を完結させるなど、新たな物流システムを導入する。
 <情報インフラ>取引、物流の効率化、市場運営コストの削減、市場業者のマーケティング強化、都民、消費者に対する食の安全性や食文化に関する情報発信など、市場機能の高度化を図るために情報インフラを整備する。
 <桟橋の設置>モーダルシフトの推進によるトラック輸送の抑制や集荷の広域化など将来の輸送条件の変化に対応するため、6街区(防潮護岸の街区)に市場用桟橋を設置する。
 <衛生対策の充実>商品の安全性に対する消費者や買出人の信頼に応えるため衛生・品質管理基準に適合する施設構造とする。取扱品目や業種業態ごとの品質管理や商品の取扱ルールについては、市場業者と協議の上、具体策を決定する。
 <卸・仲卸業者>品揃えの充実に加え、情報力の強化、物流コストの削減等が必要であり、具体的な活性化策については今後の計画で決定する。
 また、加工機能のあり方、卸・仲卸売場の規模等についても今後の計画で決定。
 <整備手法の多様化>冷蔵庫、加工施設、通勤車両用の駐車場等の施設は民活型土地利用システムを活用して整備する。千客万来ゾーンについては、多様な民活手法の導入を図る。
 <使用料>卸売場や搬出入バース、通勤車両用駐車場等一般開放施設の使用方法については、今後の計画で決定。また、新市場に対応した使用料体系は、使用料負担の水準を試算した上で決定する。