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伝統技術[工芸編K]日本橋大伝馬町「江戸屋」 インタビュー映像がご覧いただけます。
 日本橋大伝馬町は、宿から宿へ馬の背に荷物を積んで運ぶ江戸時代の制度「伝馬」に町名が由来します。江戸・明治時代は木綿問屋、戦後は繊維問屋が繁栄を極め、商いの町として大変賑わいました。この地で300年近く刷毛を製造してきた東京で最も古い刷毛・ブラシの老舗「江戸屋」があります。12代目店主・濱田捷利(はまだかつとし)さんにお話を伺いました。

商品

江戸屋の歴史
 
 江戸屋初代・利兵衛(りへえ)は、江戸時代に上方(京都)で刷毛師として修行し、江戸に戻ってからは、大奥の化粧刷毛や将軍のお抱え絵師が使う刷毛づくりをしていました。享保3年(1718)年に将軍家から「江戸屋」の屋号を与えられ、刷毛の専門店としてここ大伝馬町の旧日光街道沿いに店を構えたのが初まりです。明治以降は、生活の西欧化に伴い、ブラシの製造も始めました。以来300年近く当地で店を営み、刷毛・ブラシの製造、販売をしています。
  商品は、塗装用(掛け軸、障子、漆器、染めもの等)の刷毛、掃除用(パイプ、ビン、新幹線、自動車等)のブラシ、あるいは化粧用や洋服ブラシ、ボディブラシ、歯ブラシ、ヘアブラシ、靴磨き用のブラシ等があります。3000種類にも及ぶ刷毛やブラシは、その用途により大きさ、形状も様々です。また、お客様は、一般の方から業務で使用する職人、工場まで多岐に渡ります。

 
12代目を継ぐまで
 私自身は、昭和18(1943)年に、日本橋大伝馬町で生まれました。太平洋戦争中に疎開していた時期を除けば、ずっとここで生活をしています。店が老舗であるということは、幼少の頃からよく聞かされていましたし、家業を継ぐことも自然に受け入れていました。私が若い頃に父が他界したため、祖母・濱田花子が先代として店の采配を振るい、その後、私が後を継ぎました。
  現在の建物は、関東大震災後に再建しましたが、バブル経済で地価が高騰し土地の買収話が持ち上がった時には、商いを「誠実にやる」ことを信条とする先代が店を守り通しました。私もその姿勢を受け継ぎ、日本橋大伝馬町のこの地で「誠実にいいものをつくる」ことを守り通しています。

 
歴史ある「手植え」の技
 刷毛やブラシづくりで使われる技術の中でも、豚や馬、山羊、イノシシ等の天然の毛を、柄に空けた一つ一つの穴に手で植え込む「手植え」の技術が、一番古く伝統あるものです。これは、能面の翁のヒゲ、武士がつけた頬当(ホホアテ)や大名行列の時に持った槍の鞘などにも使われていた技術です。
  最高級の洋服ブラシの「手植え」では、植え込む毛を種類に応じて仕分けした後、整え、面取りをして開けておいた柄の穴に植え込んでいきます。刷毛師として50年以上の職歴を誇る田中三郎による「植え込み」作業を細かくお見せしましょう。
    職人技
天然毛の「植え込み」
 整えたブタの毛を適量つまみ、二つに折り、あらかじめ柄の穴に通しておいたステンレスの線に引っ掛けます。「引き線」といわれるステンレスの線で毛を引っぱり、柄の穴に固定させます。さらに引き線を切らずに別の穴に通し、毛束を植え込む作業を同じ様に繰り返し行います。手作業で120〜130個ほどの穴へ植え込みを行うので、その都度、毛の量・長さ・折り位置が同じになるように注意します。すべての穴に植え込んだ後、引き線を切り、金槌で叩いて整えます。柄のフタをつけて「植え込み」の作業は完了します。
  「植え込み」はすべて指先の感覚で行われるため、熟練の技術が必要です。天然の毛は湿度により状態が異なりますが、製品としては同一でなくてはなりません。それがもっとも難しい点ですが、機械植えと比べ、手で微妙な調整が効き、丁寧につくることができるのが利点です。
  「一度使うと手放せない」とお客様から評判を得ている江戸屋の刷毛やブラシは、こうした職方(職人)の誠意と技術に支えられています。当店は暖簾分けせず、下職制を採っています。現在、ともに仕事をしている100名にのぼる職方を大切にすることが、ひいては高品質なもの作りにつながるのではないでしょうか。また、職方の後継者を育成することも店主の務めと思っています。

手順1手順2手順3
1.適量の毛をつまむ  

2.引き線で毛を引く

  3.引き線を整える
   
べったら市

地域との関わり
 
 地域活性化の一環として、宝田恵比寿神社で毎年10月19・20日に開催されるお祭り「日本橋恵比寿講べったら市」の保存会会長も務めております。べったら市とは「祭りの混雑を利用して、若者が参詣の婦人にべったら(浅漬大根)をつけるとからかった」という謂れの歴史あるお祭りです。社会教育の一貫として、近隣の小学生に「べったら市」をテーマに絵や作文を書いてもらい、保存会で表彰などもしています。また、当店で子供たちに刷毛づくりの職人芸を体験してもらうなど、地域の活動にも尽力しています。
  この大伝馬町一帯は、かつては木綿問屋や繊維問屋で非常に栄え、安藤広重の版画にも残っているほどです。また、以前は近所に染め屋等も多く、染色の職人に当店の刷毛をお納めしていたものでした。21世紀の現在にあり、伝統や技術が失われることのないよう努めつつ、息子の協力のもとで、これからも時代の要請に合った商品を積極的に開発し、「誠実第一」で高品質な商品をお届けしたいと思います。

 

 
DATA  
店舗
株式會社江戸屋
一般から業務用まで幅広く刷毛とブラシを製造販売している。個人向けでは、ボディブラシ(3,000〜4,800円)、洋服ブラシ(3,000〜15,000円)、ヘアブラシ(1,800〜15,000円)、化粧用ブラシ、歯ブラシ等、実にさまざま。価格は材質・製造法(天然毛/ナイロン毛、手植え/機械植え)によって異なる。法人向けでは、塗装ブラシ、掃除用(新幹線、自動車等)ブラシから、半導体関連の非常に繊細なものまで多岐に渡る。昭和初期に建てられた木造建築のお店へは個人客も気軽に訪れることができる。※表示価格は消費税別
商品住所:中央区日本橋大伝馬町2番16号
電話番号:03-3664-5671
FAX番号:03-3664-5674
URL:http://www.nihonbashi-edoya.co.jp
営業時間 :9:00〜17:00(土日祝休)
最寄り駅:東京メトロ日比谷線「小伝馬町」駅/JR総武快速線「新日本橋」駅
 


2005年3月掲載記事  
※内容は、掲載当時のものとなります  
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