A. 前回の質問への回答と真逆になってしまうのですが、あえて、今回は「歩く」ことがダイエットと健康増進の基本ということを強調してみます。やはり全ての年齢層を通じておすすめの有酸素運動と言えば、ウォーキングなのです。ウォーキングは単に「歩く」習慣をつければ良いのですが、地味なイメージや他の有酸素運動と比べると消費カロリーが少ないことで、ダイエット効果だけを考えると、時間を割くわりには効果がみられないと感じてしまい挫折する人も多い様です。少し長めの距離を歩くこと、そしてそれを毎日地道に続ける、このモチベーション維持は難しいものです。ウォーキング中にイメージする姿としては、競歩の選手のように力のこもった歩きを連想しがちですが、スタイルにこだわらず、とにかくなるべく毎日続けていく根気が大事だと思います。
スポーツや健康維持目的でもない全く別の世界の話ですが、最も凄い「歩き」、超人的な「歩き」を修行としてきた歴史がわが国にはあります。それは、仏教で最も過酷な荒行とされる「千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)」です。比叡山、あるいは奈良の吉野山などで行なわれ、山中を1000日間(全行程で7年もしくは9年間の修行)かけて、ひたすら歩き続けて巡礼するという修行です。途中で挫折しそうになった時に、自らの首をくくり自決するための紐を腰に結んで歩き、さらに自決用の短刀も携帯します。この修行が始まってしまったら天候や病気などのいかなる理由であろうと途中で止める事は許されず、挫折した時は死を選ばなければならないという非常にシビアな荒行です。1000日間で歩く距離の合計は、なんと約40000キロメートル。これは地球一周分に相当する距離です。一日に30kmから、時期によっては80kmほど歩き続ける時もあるそうです。
一日の大半を歩き、他に日常作業を行いつつ巡礼をしますので、必然的に睡眠時間も毎日2~3時間程度となります。1日の限られた時間内で巡礼を終えるためには、とても速いスピードで歩かなければなりません。(実際にはほぼ小走りのようなスピードです)。不思議なのは、これほど過酷なウォーキングで激しい消費カロリーのはずなのに、修行者はこの間1日2食の精進料理だけで過ごすことです。普通は身体が持つはずがないと思いますが…。常人には真似のできない、もはや人の限界を超えた驚愕の世界です。さらにこの修行中には9日間、飲まず、食わず、寝ず、横にならずの不眠不休で真言を唱え続ける「四無行(しむぎょう)」という超人的な試練も含まれています。こうなると人間業ではないですね。
あまりに浮世離れした例を挙げても、ウォーキングのモチベーション維持にはつながらないかも知れないですが…。しかしこれで「今日は頑張って5km歩く!」なんていう目標が短い距離に思えるようになったかもしれませんが、如何でしょう。
「信念を持って毎日頑張って歩き続けていくことは精神修養にもなる。」ということも学ぶことができます。