A. 私たちは加齢と共に様々なものを失います。子育てが終わり子供が離れていく、定年で仕事をやめる、若い頃のように体が動かない、家族や友人を亡くす。こういった喪失体験によるストレスが重くのしかかってしまい、中高年のうつ病の原因にまでなっていることが指摘されています。また、人間は高齢になると神経伝達物質が減りホルモンのバランスに変化が出るため、怒りっぽくなったり感情が不安定になる人が増えます。そしてストレスによるダメージからの回復力も、加齢と共に低下してしまうのです。
しかし、高齢者がストレスに対して弱くなるからといって、外部との接触を制限することは逆効果になります。ストレスがまったくない状態にしてしまうと、逆に加齢による身体の変化が逆に進みやすくなり、認知症が進行してしまうようです。これは、かえってストレスに対する耐性を低下させてしまい、ストレスに敏感な状態にしてしまうということなのでしょう。
医学的な「ストレス」の解釈について、ストレス学説の権威であるハンス・セリエ博士は「ストレスは人生のスパイスであり、ストレスの全くない生活を望むのは死を望むのと同じである」と述べています。
博士が伝えたかったことは、「ストレスを避けようとするのではなく、ストレスに対する抵抗力を高めることに努力を払うべき」ということだと思います。自分の健康に対しての目標、あるいは人生に対しての目的を持って毎日を過ごしてゆけば、ストレスを抱え込みながらでも元気でいられるのではないか、と私は考えています。
※参考文献
Selye H: The general adaptation syndrome and the diseases of adaptation.J Clin Endcrinol 1946;6:117-230