A. 「ヘバーデン結節」の可能性が高いでしょう。1802年、William Heberdenが指の第1関節に関節リウマチや痛風とは異なる結節を生じると指摘したことから名付けられた、指の変形をきたす代表的な疾患です。病態的には指の第1関節の軟骨が磨り減っていく「変形性関節症」ですが、初期の痛みがある時期を除けば症状は変形が主体で、通常は日常生活を大きく障害することはありません。加齢に伴い増加し、一般には女性に多いとされています。遺伝的素因の関与や、手を頻繁に使う有職者に多いとの指摘もありますが、原因はいまだ明らかではありません。また、指だけでなく、ひざなど他の関節の変形性関節症が同時にみられることも少なくなく、全身的疾患の部分症であるとの考え方もあります。同様の結節が第2関節に生じたものをブシャール結節といいます。
初期には第1関節に腫れ、熱感、発赤などの炎症所見を伴い、一時痛みが強いこともありますが、次第に痛みが軽減し、しこり状となります。進行すると曲がったまま固まったり、斜めに曲がるなどの変形をきたすようになります。水ぶくれのような小さなのう腫を合併する場合もあります。
臨床症状とレントゲン所見より診断は容易ですが、同様に第1関節に関節炎を生じる乾癬性関節炎や、第2関節から発症することの多い関節リウマチなどとの鑑別は重要です。治療は、水仕事を控えたり、寒さを避ける工夫をすることが大切で、消炎鎮痛剤(外用剤)の投与、局所のテーピング固定、温熱療法をはじめとする理学療法など、対症療法が主体となります。治療により変形の進行を止めることはできませんが、数か月から数年の経過で変形を残したまま、痛みが消失する場合がほとんどです。高度の変形をきたし、職業上や日常生活上支障がある場合には、関節を固定する手術を行うことがあります。
一般には、関節リウマチではないかと心配されて来院する方が多い疾患ですが、専門医であれば診断は容易なので、不安な方は早めにご相談ください。