A) “ニキビ“は”アクネ“とも呼ばれますが、医学用語では“尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)”といいます。思春期以降に男性ホルモンなどの影響により、顔、胸、背中にある脂腺系毛包(毛穴)から皮脂が多く分泌されたり、古い角質が詰まり毛穴が閉塞したりすると、皮脂が毛穴の中にたまって、目に見えない極めて小さな毛穴のつまり(微小面皰:びしょうめんぽう)ができ、これが徐々に大きくなると白ニキビ(面皰:毛穴が閉じている)や黒ニキビ(毛穴が開いて、たまった皮脂が酸化されて黒くなる)となります。また皮膚常在菌のニキビ菌(アクネ桿菌)が皮脂を栄養として過剰に増殖し、たまった皮脂を分解し炎症をおこし、赤いニキビになります。さらに炎症が拡大して周囲の組織に広がると、後で凸凹したニキビ痕(痤瘡瘢痕)を残すことがありますが、これを治療するのは保険診療では難しいため、痕にならないように早めに治療する必要があります。
これまでの話を整理すると、ニキビの原因は①皮脂分泌の増加、②毛穴の閉塞、③ニキビ菌の増殖による炎症、となります。従来の日本におけるニキビの治療は、内服あるいは外用の抗生剤でニキビ菌が増えるのを抑えることが中心だったのですが、2008年にアダパレンという塗り薬が導入され、毛穴のつまりを取り除く治療が保険診療の中でできるようになりました。また2015年にはニキビ菌が増えるのを抑えるのに加え毛穴のつまりを取り除く過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide: BPO)製剤の塗り薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。
炎症を伴う急性期には、まずアダパレンもしくはBPOと抗生剤の外用を開始し、重症であれば抗生剤の内服などを加えます。必要に応じて保湿することも大切です。炎症が落ち着いても抗生剤の投与を続けていると耐性菌が出てくるので長くても3ヶ月を目安に中止し、アダパレンもしくはBPOを塗り続けることによって微小面皰や面皰に作用しニキビの進行を防いだ状態を維持します。ただしアダパレンとBPOはどちらも使い始めに乾燥したりヒリヒリしたりすることがあるので、初めはニキビがあるところに点で塗るようにして、問題がないようであれば眼や眼のまわり、唇を除いた顔全体に面で塗るようにし、1~2週間後に皮膚科医師に診てもらうといいでしょう。
また皮脂の分泌を抑えることは薬では難しいのですが、ビタミンや食物繊維が豊富な緑黄色野菜を取ることや、脂肪分を多く含む食品は控えめにすること、またストレスや疲れをためないように規則的な睡眠を取り、適度な運動と趣味の時間を持ちリラックスすることが大切です。
あと前髪がおでこにかかるとニキビを刺激するので、前髪をピンで留めたり、上にあげたり、短くするなどした方がいいですね。またニキビを自分で潰すのは雑菌が付いたり、周囲の皮膚まで傷つけてしまうことがあるので絶対に避け、近くの皮膚科専門医にご相談ください。