A) 皮膚は体の表面を覆っていますが、体の中から体液が外に漏れてしまったり、体の外から細菌やウィルスなどが中に入ってしまったりしないように、バリアとして働いています。皮膚は表皮、真皮、皮下組織からなりますが、バリアとして主な役割を果たすのは一番外側にある表皮の角質層です。角質層は角質細胞が何重にも積み重なって出来ており、①細胞と細胞の間のすきまを埋めているセラミドなどの角質細胞間脂質、②ケラチンやフィラグリンの代謝産物を主成分とし細胞の中で水分を保持する天然保湿因子などが、バリア機能の維持に重要であることが知られています。また皮脂腺から分泌される脂(皮脂)が、汗などに混じって皮膚の表面を覆い(皮脂膜)水分の蒸発を防いでいます。
乳幼児の皮膚は成人に比べ、角質水分量が少なく、皮脂の分泌量も新生児期を除くと少ないため、とても乾燥しています。また皮膚も薄くバリア機能も未成熟なのです。さらにアトピー性皮膚炎の患者さんではフィラグリン量が減少していることが多く、よりバリア機能が低下しています。 そのため空気が乾燥しやすい秋から冬にかけて、寒くなると汗をかかなくなることもあり、皮膚が乾燥してバリア機能が低下すると、体が温まったり、衣服がこすれたりといった、日常のありふれた刺激で皮膚が炎症を起こしやすくなってしまいます。また痒みを伴うために皮膚をひっかくと、バリアをさらに壊してしまい、症状が悪化して痒みが強くなってしまいます。近年、皮膚のバリア機能が低下するとダニや花粉などさまざまなアレルゲン(抗原)が体内に侵入してアレルギー症状が生じやすくなると考えられており、新生児に保湿剤を毎日塗ることでアトピー性皮膚炎の発症リスクを抑えることができると報告されています。要するにお子さんは小さい頃からまめに保湿をしてあげる方がいいのです!
また角質細胞間脂質、天然保湿因子、皮脂は年齢を重ねると徐々に減少してくるため、この季節になると膝から下や腰周りの皮膚が乾燥してしまうことが、特に年齢を重ねた方によくみられます。最近は過度のエアコンによる乾燥した生活環境や、ナイロンタオルなどでゴシゴシ洗うことで、若い方でも肌が乾燥している方が多いので、加湿器などで適度な湿度を保ち、体は泡立てた石鹸でやさしく洗って十分に洗い流し、入浴後の皮膚がしっとりしているうちに(5分以内が望ましい)保湿剤を体のしわに沿って塗ることが大切です。
市販の保湿剤の中には刺激になるものもありますし、痒みが強いときには抗ヒスタミン薬などの飲み薬やステロイド外用薬などのぬり薬も必要です。何かありましたら、近くの皮膚科専門医にご相談ください。