A) 乾癬では、皮膚が赤く盛り上がって、表面に白いカサブタが付き、フケのようにポロポロとはがれ落ちるのが特徴的な症状です。なお“かんせん“という響きからか、”感染“すると誤解されることがありますが、うつる病気ではありません。
皮膚は表皮、真皮、皮下組織からなりますが、表皮はその一番内側にある細胞が分裂・増殖して、何重にも積み重なって一番外側に角質層を形成しており、約1ヶ月に1度、表皮細胞の増殖に伴って、古い角質は垢(あか)となってはがれ落ちるという、新陳代謝を繰り返しています。
乾癬は、表皮が通常の10倍以上の速度で生まれ変わり、過剰に作られた表皮が厚く積み上がり、銀白色の鱗屑(皮膚の粉)となってはがれ落ちます。また免疫反応により、皮膚に炎症を起こす細胞が集まっているため、毛細血管が拡張し、皮膚が赤みを帯びた状態になります。
症状によって5つの種類に分けられますが、9割を占めるのが“尋常性乾癬”で、頭、肘、膝、おしりなど、衣類とこすれたり外的刺激を受けやすい部位によくみられ、患者さんによっては全身の皮膚におよんだり、爪の異常やかゆみがみられることもあります。
原因ははっきりとまだ分かっていませんが、乾癬になりやすい体質的な要素(遺伝的素因:白人に多い)に、様々な環境要因(気候(冬に悪化)、ストレス、感染症(風邪、扁桃腺炎など)、喫煙、飲酒、食生活、糖尿病、高脂血症、肥満など)が加わって発病すると考えられています。日本では近年、食生活の欧米化が進んだことなどにより、患者数が増加傾向にあるといわれており、男女比は2:1と男性に多く、男性は30歳代から、女性は10歳代と50歳代での発症が多いようです。
治療には、大きく分けて4つの方法があります。基本は塗り薬による外用療法で、主にステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬が用いられます。ステロイド外用薬は皮膚の炎症を抑制しますが、長期間使用すると皮膚が薄くなる、毛細血管が拡張するなどの副作用が生じる可能性があります。活性型ビタミンD3外用薬は表皮細胞の増殖を抑制し、効果が表れるのは遅いのですが、副作用がほとんどなく、両者を組み合わせて用いるのが一般的です。最近は両者の配合剤が開発され、高い治療効果が確認されています。ただし強く擦り込むと皮膚を刺激してしまうので、やさしくのせるように、皮膚の溝の流れに沿って塗ることが大切です。しかし広範囲に皮膚症状が出ている場合は、外用療法だけでは治療が難しいので、他の治療法を組み合わせる必要があります。紫外線療法は、症状のある部位もしくは全身に紫外線を照射して過剰な免疫作用を抑える治療法です。週1,2回の通院が必要で、日焼けや色素沈着の副作用がありますが、重症の場合や皮膚症状が広範囲にある場合に用いられています。内服療法には、免疫の異常を抑える“シクロスポリン”や、皮膚の新陳代謝を調整する“レチノイド(ビタミンA誘導体)”が用いられます。シクロスポリンは主な副作用として血圧上昇や腎機能障害などが報告されており、定期的な血圧測定、血液検査が必要です。レチノイドは胎児に影響を与えるおそれがあるため、内服中だけでなく内服中止後も男性は6ヶ月、女性は2年の避妊が必要です。また近年、生物学的製剤という新しいタイプの注射薬が開発され、いままで治りにくいとされていた症状の重い患者さんにも効果が期待できると考えられています。乾癬では手先や足先に関節炎がみられることがあり、早期に治療をしないと関節が変形し元に戻らなくなるため注意が必要なのですが、生物学的製剤の中には関節症状にも有効なものがあります。
乾癬は以前に比べて、格段に治療の選択肢が広がっています。何かありましたら、近くの皮膚科専門医にご相談ください。