文化財の活用やアクセスで提案
浜離宮庭園の魅力を育む懇談会
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| 一昨年4月、(財)東京都公園協会理事長の諮問機関として「浜離宮恩賜庭園の魅力を育む懇談会」が設置された。矢田中央区長を座長に地域の代表者・関係する分野の有識者と行政機関のメンバーで構成された。検討した内容は次の三項目。(1)庭園の魅力増進のための諸施策に関すること、(2)庭園の利用活性化に向けた周辺地域団体との連携および環境整備に関すること、(3)そのほか庭園の管理運営に関すること。浜離宮は国の特別名勝、特別史跡の二重指定を受けている日本有数の文化財庭園として、かけがえのない貴重な財産。懇談会はこうした文化財としての価値を再確認したうえで、その魅力を育くむ方策について提言をまとめこのほど公園協会理事長に報告した。江戸時代に創設された施設を復活するように提案している。すでに中島の茶屋は復元され庭園のシンボルとなっているが、大手門櫓、中の御門、さらに中島の茶屋以外の多くの茶屋の復元を求めている。とくに高速道路側の中央部にあった中の御門は、隣の汐留開発と新しい鉄道アクセスの設置から「早急に復原を図るべき」と強調している。また新アクセスとして竹芝地区を結ぶ新ゲートについても「強力に推進すべき」としている。報告書での主な提言の内容は次のとうり。 |
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大手櫓、茶屋を復元 竹芝側に新しいゲート
庭園の復元・整備
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これまで中島の茶屋および鴨場や池(横堀池)護岸の修復復元を実施した。しかし、大手門、中の御門、中島の茶屋以外の多くの茶屋は、失われたままとなっている。庭園の魅力を高めるために、庭園建築・構作物等の復元・整備が必要である。
(1)中の御門は庭園施設として復元のほか、周辺市街地の整備に伴うアクセスの改善として、早急に復元をはかるべきである。
(2)大手門櫓、鷹の茶屋、松の茶屋など多くの茶屋群についても、順次復元について努力すべきである。
(3)石垣、階段、飛び石、延段、護岸等施設は、現状を具体的にチェックし、きめこまやかな復元を行っていく。
<庭園景観の創出>本庭園の特色は、回遊しながら庭園景観を楽しむ、草花を鑑賞する、鳥類・魚類を愛でること等であり、園路全体でこれらを演出することが望ましい。
特に、来園して庭門跡までは、本庭園に誘う部分として重要な役割を担っている。いよいよ庭園に入るという期待感を盛りあげることが望ましい。(季節感あふれる草花。マツの緑摘み、雪吊り、竹垣づくりの公開)
<植栽景観の維持>庭園を構成している樹木は、時間の経過とともに作庭当初と異なった植栽景観となってしまう場合が見受けられる。管理のなかで、作庭意図に基づく植栽景観の維持と保全に努めるべきである。
三百年の松など古木を保護し、これらを活用したイベントの実施▽高木は成長後の樹形や周辺への影響を想定した管理計画▽アオキ、ヤツデなど実生木は、できるだけ幼木のうちに除去▽石垣の間から発芽成長した高木類は、石垣崩壊の原因ともなるので、発芽した段階で除去。
<バリアフリー>庭園内の観覧園路は、砂利敷き・飛び石等であり、また、建物施設も充分なバリアフリー対策を実施しているとはいえない。文化庭園であり、基本的な庭園形態を改変することには限界があるが、各種施設について最大限の創意工夫をはかるべきである。
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<鉄道アクセス>(1)平成14年秋には「ゆりかもめ」汐留駅と大江戸線汐留駅の開業が予定されている。両駅とも汐留再開発地域の進捗に合わせたオープンであり、各々の駅構内をはじめ歩道および街路樹を来園アプローチとして整備すべきである。(2)JRや地下鉄の新橋駅からのルートは、周辺整備によって、かなりの変化が予想される。今後の再開発の動向などを見ながら、新たな対応をする。
<水上アクセス>現在、水上バス等による来園者は30%であり、大きな比重を占めている。現ルート(東京都<みやこ>観光汽船)は、浅草・吾妻橋から浜離宮を経由して日の出桟橋である。すでに公園協会は、水辺ラインの不定期なイベント便で利用している。しかし、現在の船着き場は十分利用されているとはいえず、新たな利用向上策が必要である。また、同施設は老朽化しており改善の必要がある。
<中の御門へのアクセス>中の御門の復原にともなって汐留駅からのアクセスを実現する必要がある。
(1)今後、御門の復元、再開発の進展に合わせて道路管理者、交通管理者、高速道路関係者、区画整理、再開発事業者の協力を得て新たな来園ルートの確保・整備に努める。
(2)これらが実現した場合、現在の正門を取り巻く状況は変化し、その役割について、あらためて検討する。
<竹芝からのアクセス>竹芝地区の再開発が進展し、竹芝埠頭が整備された。竹芝地区に隣接するゲートを設ければさらに魅力的なアクセスが実現される。実施には多くの課題があるが、港湾・河川・道路管理者の協力で、協力に推進すべきである。 |
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<文化財の利用復元>(1)将軍が、この庭園で実際に行ったことについて検証し、イベントとして実施する。(2)今後は、放鷹術の実演とともに、馬場跡を利用した流鏑馬(やぶさめ)についても検討すべきである。(3)「雪吊り」「松のみどり摘み」「竹垣」を庭園の風物詩として鑑賞し、作業参加の機会を設ける。
<江戸文化の再現>浜離宮庭園は江戸を代表する庭園であり、江戸の伝統文化についても展示・実演などに取り組む必要がある。正月開園にあたって「江戸伝統工芸展」として市松人形、押し絵羽子板ベッコウ、桐ダンス、刃物などの展示実演が好評だった。
<子供たちの行事>文化財庭園の子供たちの利用は少ない。しかし、子供達こそ次代のセン在的利用者であるとの視点にたった展開が必要である。(1)子供たち向けの行事やイベントを実施する。(2)「緑と水」の市民カレッジを活用して、子供向け講座などを展開する。(3)地元教育委員会と連携して総合学習の場として活用する。
<浜離宮恩賜庭園管理所=TEL354・0200> |
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| 座長=矢田美英・中央区長▽副座長=井手久登・東京大学名誉教授▽委員=大塚明・汐留地区街づくり協議会会長 小柳重隆・東京商工会議所中央支部副会長 須永敏子・都市環境デザイン会議運営委員 関口敏幸・地元企業代表(丸高) 中村季恵・報道関係 潘桂華・中央区観光協会事業委員長 山岡保之助・地元商店街代表(銀座ナイン出店者会長) 古川公毅・前東京都建設局長 山下保博・東京都建設局長(平成13年7月から) 佐藤一夫・財団法人東京都協会理事長 |
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