4月の区議選各地域の戦況を展望

 今年4月は統一地方選挙が実施される。日程も、都知事選は3月27日(木)告示、4月13日(日)投票、区長・区議会議員選挙は4月20日(日)告示、27日(日)投票と決まった。中央区は定数が30になってから3度目の選挙になる。人口の急増にともなう有権者の増加が選挙の最大関心事。増えた人口は大半が集合住宅で地域から隔絶されていることから、実情を読めない。ただし、はっきりしていることは、こうした住民は好んで中央区に移り住んでいるということ。いくら地価が下がっても、田舎に家を建てるのとはちがい、それだけモトデもかかっている。こうした住民を相手に住民代表を選ぶのは初めてのこと。票としてどういう流れをつくるのか関心がもたれる。今期で共産党を支えてきた重鎮の森山氏と木藤氏がそろって引退する。新人2人で五議席を確保できるかどうか。公明党も佐藤氏と青木氏が引退、若手2人が立つ。自民党は公認申請の扱いでいまだ結論が出ない。さてどんな闘いになるのか、3地域の戦況を展望してみた。



京橋地域

 京橋地域はここしばらく選挙戦はあまり波風がたたなかった。しかし今回は共産党の大物が2人引退し、築地の場外を地盤にする自民党の礒野氏も引退する。礒野氏はすでに子息の忠氏にバトンタッチを発表している。ただし築地に住む田中氏が公明党で初挑戦するので波紋をよぶ。
 森山氏と木藤氏はともに共産党ばなれしたキャラクターで人気を集めており、従ってかなり保守層にも食いこんでいる。こうした特殊な地盤を新人の藤田氏と志村氏が引き継げるかが注目の的だ。1部に森山氏の区長選出馬を予想する向きがある。もし共産党がこの戦略をとると、引退する2人の票の流出を食いとめることはやりやすくなる。その意味では森山氏の去就が関心を集める。
 公明党はかつて築地に小島氏が立っていただけに党の地盤は固めやすい。
 さて自民党は京橋では礒野氏、小林氏、今野氏、押田氏がいる。礒野氏の子息はPTAで活躍してそれなりの人脈をもつ。小林氏は昨年、愛妻をなくして去就に迷いもあるが、周辺は「築地のために」と一致して推している。今野氏は小畑氏の地盤を継いで四期に挑戦という中堅に。世代交代で自民党リーダーの一翼を担うに至っている。
 自民党の矢吹氏や区民クラブの守本氏もともに京橋地域に縁があり、固い票をもち、とくに森山氏の地盤の行方が気になる立場にいる。さらに気が気でないのが押田氏。父の地盤を継いで五期になる。同じ新川の木藤氏が引退してどう影響してくるか。
 自民党の幹事長をつとめた重鎮、大塚氏は八期目に挑戦する。師とあおぐ藤間氏は他界したものの現在の区議会には欠かせない存在だ。
 京橋地域の区議の動向をみると、まず銀座から議員がいなくなってしまった。かつては自民党の西川・吉川両氏が仲よく票をわけていたことが懐しい。銀座にも高層マンションが次々とお目見えしているだけに議員ゼロという実情は惜しまれる。同じことは京橋にもいえ、東京駅前開発の進展状況から地元には「区議さんがいれば」という声もでている。
 さらに築地は市場の移転と電通の引っ越しで、まちがいなく変化する場所だ。区議選で、この地区をどうするかの真剣な政策論議が大いに期待される。



日本橋地域

 日本橋地域は選挙のたびに火種のおこるところ。今回は自民党の新人3人の扱いで揺れている。
 まず名のりをあげたのが、33才の若さを売りものにする小川雅幸氏。富沢町のマンションに居をかまえ、意欲的に地域を回っている。すでに後援会も発足させ、鳩山代議士にたっての頼みと言われて富田蓮右衛門氏が会長に就任、問屋街の反発をよそに精力的に挨拶まわりを続けている。神奈川選出で内閣府副大臣をつとめる米田健三代議士の秘書でもある。地盤のかちあう現職区議はかなりの警戒心をいだいている。
 浜町の消防団につとめる奥村豊氏も自民党に公認を申請した。親の代から浜町に住んでいたが今は箱崎のマンション住まい。浜町には高橋氏が自民党を離れたために、自民党地盤をつくるには格好という声もでている。
 再挑戦するに当たって迷ったすえに、増渕一孝氏が自民党に公認申請した。箱崎の後援者のすすめもあって深谷代議士と会い応援を約束したという。前回は中山代議士の支援を受けて無所属候補だっただけに、その変化が注目を集めている。前回は次点に泣いただけに再挑戦になみなみならない決意を秘めているものとみられる。
 こうした3人の立候補で身を引き締めているのが自民党の宮澤氏、神林、石島、石田の各氏と区民クラブの高橋氏。とくに石田氏は問屋街を喜多川氏から引き継いだいきさつがあるだけに地元の混乱に頭をいためている。また奥村氏は高橋氏の選挙を手伝ってきただけに、浜町の有権者の反応が気になるところだ。
 しかし選挙というもの、混戦になるほどお互いに票を伸ばしあうもので、新開拓していくチャンスともいえる。
 公明党の青木氏は4期つとめて年令により引退。日本橋から新人後継者は断念し、前回新人で当選した鈴木幸子氏が地盤を継ぐ。立候補したときは日本橋に居をかまえていたので、いわば古巣に戻ることになるが、右から左へ地盤をかえて当選できる仕組みに疑問の声もある。
 共産党の小栗氏は吉田綾子氏の地盤を継いで3期をかぞえる。区民クラブの坂戸氏はスポーツ関係などもまとめて4期に挑戦。富永氏は6期になるが、中央会館を満杯にする強力な支援母体をもつ。去就が注目されている。



月島地域

 月島地域は中央区でいちばんの有権者をかかえているだけに区議も多い。新人は公明党の中島けんじ氏と共産党の志村氏が正式に出馬表明。中島氏は生まれは湊町で晴海に住んでいる。佐藤氏の地盤を受け継ぐ。志村氏は区議選に出馬したことがあり、前回は共産党が六議席をめざす断を下したもの土壇場で方針切り換えをして出馬を断念した。
 リバーシティ21に居を構えて区議になったものの2期目に涙をのんだ鷺頭隆史氏が今回は自民党に公認申請した。4年の浪人している間、パソコン教室でお年寄りの面倒をみたり、ホームページを開設するなどユニークな活動を展開している。同じリバーシティ21に居住する安孝比古氏は深谷代議士の後援会に顔を出していたが、今回、自民党に公認を申請していない。リバーシティーで自治会長の守本氏は独自の駒を進める。。
 もう1人うわさにのぼっているのが勝どきの飯塚由恭氏で、バスケット連盟でミニバスなどの指導をしている。築地市場の会社につとめていたが退社している。
 現職では中央区議会では初めての10期目に挑む矢吹氏が元気。70歳をこえたとは思えぬ若さで独自の地盤を維持している。鈴木氏は5期目に挑み、同じ勝どきの中嶋氏は3期に朝鮮。自民党でありながら鳩山・中山系と深谷系とで競い合う。原田氏は父の地盤を手固くかためて初当選、2期目の壁にのぞむ。鳩山系無所属で当選しながら自民党にくら変えした二瓶氏も2度目の挑戦。自民党からの新人が出ないことは幸い。
 公明の植原氏も2期目。人口の多い勝どきで手固い票を有している。同じ女性の区民クラブの青木幸子氏は前回、返り咲きの当選を果たした。4年間の活動が試される。
 共産党の田辺氏と鞠子氏は7期と5期と年輪を重ね、月島地域で独自の地盤を固めている。晴海の渡部博年氏は4期にして区民クラブの幹事長をつとめた。自民党の渡部良一氏との確執の行方が注目されているが公認申請はない。公明党の田畑氏は自分の選挙より女性2期と新人2人をかかえる来期の会派運営が気になるところ。前回、公明党を辞して7期をめざし果たせなかった原田徳雄氏の出方も気になる。
 1期つとめた阿部利之氏が注目されている。出馬すると台風の目になりそうだ。



平成11年 区議選の結果

 

石島 ひでき (自民3) 1,518   神林 いさお (自民4) 1,325
鈴木  久雄 (自民4) 1,237   高橋 しんじ (無所5) 1,197
田畑 いそじ (公明5) 1,195   今野  弘美 (自民3) 1,148
まりこ 勝彦 (共産5) 1,143   原田けんいち (自民1) 1,141
なかじま寛明 (自民2) 1,118   おおつか忠彦 (無所7) 1,008
青木かずまさ (公明4) 1,057   小林たかみつ (自民3) 1,030
佐藤 孝太郎 (公明3) 1,027   わたなべ博年 (無所4) 1,019
森山   一 (共産6) 1,011   青木  幸子 (無所2) 959
鈴木  幸子 (公明1) 955   植原 やす子 (公明1) 911
おぐり智恵子 (共産3) 911   守本  利雄 (無所7) 908
田辺  七郎 (共産7) 873   木藤 えい子 (共産7) 863
石田 ひでお (自民1) 840   矢吹  和重 (無所9) 789
坂戸  三郎 (無所3) 773   押田 まり子 (自民5) 764
宮澤  一郎 (自民7) 727   にへい 文隆 (無所1) 716
富永  克子 (無所6) 712   ますぶち一孝 (無所新) 705
わたべ 良一 (自民2) 593   わしず 隆史 (無所1) 578
原田 のりお (無所6) 533   あさおか利雄 (無所新) 459
安 たかひこ (無所新) 426   中野 しげき (無所新) 393