区道廃止 住民還元で基準を

区議会は5月に新しい人事を決めたのち初の定例会を23日から開会した。24日から2日間は各会派の代表が一般質問を展開した。論議は当面する区政の課題となっているマンション対策や景気回復・不況対策に集中した。人口増加にともない一挙に増えた集合住宅は、国がバブル崩壊で放置されている不良債権を処理するために建築基準法を改正し、住宅に限って容積の割増しを認めたことによる。こうして区内の空地に次々とマンションが建ったものの、敷地いっぱいに建てるために下町の生活を支えてきた路地もなくなっていき、既存住民が追いやられる状態となり、住民不安を招いている。超高層住宅への不安も根強いものがあり、このあたりが一般質問の論議の中心になった。区はこうした議員の指摘に対して新たな対応策をとると約束した。新しいまちづくり論議をまとめた。


月島では高さの制限も


区道は区民の財産
 自民党の石田英朗議員は、組合施行の大規模再開発において行われてきた「区道の廃止、付け替え」をとりあげ、「区民の財産である区道を廃止して、住民のためのものはできないのか」という区民の声を紹介。区の対応について質問した。
 矢田区長は、中央区の街区が都心でありながら千代田区に比べて面積が少いので、どうしても街区統合や区道の廃止が必要となる実情を説明。そのうえで「区道が区民共通の財産」という立場から「一定の基準は必要である」との考え方を示した。そのため、「区道の廃止をふくむ大規模開発などを指導する中央区独自の都市再生事業の計画策定方針を早急に検討する」と約束した。
 従来、区道廃止・付け替えへの対応は個別開発の中でしてきており、基準を定めることは画期的で、今後の論議が注目される。


勝どき橋を開ける
 区は今年の予算で新たに観光資源開発研究会を設置して中央区を観光の面から再生していく方針を打ち出した。この問題に関連して、自民党の二瓶文隆議員は「勝どき橋の開橋」をとりあげ「元気の発信にもなる」として区の決意のほどを質した。区長は次のように決意を語った。
 「日本一の可動橋の開橋はこれまでと異なるダイナミックな景観を生む。交通や多額な経費の問題もあるが、本区の観光の目玉の1つとして、東京都などの関係機関に働きかけ、実現に向けつとめてまいりたい」

住宅街は高さ制限
 公明党の植原恭子議員もマンションの乱立で「近隣住民とのトラブルが後を絶たない現状です」と嘆き、公開空地を設けた超高層ビルは「必ずしも地域住民にとって良くなったとは言えないのでは」と疑問符をはさむ。そこで、世田谷、江戸川、そして文京区での「行政として住民や地域の住環境を守る立場」から建築物の高さ制限を設ける動きを紹介。「特に住宅密集地や隣接するところでの建築物に高さ制限を設け」るようにと区の考えを質した。
 区長は中央区のまちづくりが「それぞれの地域特性に応じた地区計画制度の活用」に主眼をおいていると説明したうえで、「しかし月島の住宅街については周辺の環境に応じた高さの制限も必要」との認識を示し、「総合設計制度などについても例外とはしないで、地区計画の改正で高さを制限したい」との方向を明らかにした。これらは来年の用途地域の見直しで具体化する予定。

晴海護岸にマッタ
 晴海の沖合50メートルにわたる防潮堤(護岸)について東京都が「まちづくりと切り離し先行して都市計画決定しようとしている」問題について、共産党の田辺七郎議員が「後背地(晴海2丁目)の区画整理事業で大手企業地権者の意向を優先するもの」と批判、「都市計画決定の中止」を主張して区の考えを質した。
 区長は都市計画審議会への諮問について「具体的なまちづくりの話し合いに一定の合意に至るまで諮問しない」との考えを明らかにした。
 同じ問題で中央区民クラブの渡部博年議員は都の姿勢に「地域事情を無視した変更など、押しつけに近いものを感じる」と批判。さらに晴海には「地下鉄などの大量交通システムの導入が必要」として区の考えを聞いた。区長は、新交通システムの延伸を都に働きかけるとともに、LRTの導入の可能性をさらに研究すると約束した。

貸ビルに住む若者
 都心におきつつある新しい動きを説いたのはグループ未来の高橋伸治議員。それは、古い貸ビルを改装して住んでいる若者たちのことで、ビルオーナーにも住居やSOHOなどへの改装を認める動きが広がっていると指摘。こうした動向を「次世代の文化が育つ空間」としたうえで区の考え方を聞いた。
 区長は、都心の利便性を享受しながら古い建物を作りかえて住む階層の増えていることを「歓迎すべき事態」と評価。こうした流れをいかして空きビル対策としてのコンバージョンについて「昨年末の研究をさらに具体化していくとともに、歴史的建造物の保存についても努力を重ねていきたい」と答えた。
 もう1つの新しい動き、野生の生物が共生するビオトープを取り入れた「ビオガーデン」を説き、区もこうした場をより広げていくべきだと強く要望した。