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伝統的食文化の行方を、築地魚河岸の現場からお伝えします 魚河岸発!
今月のテーマ:魚って何だろう!?(其の一)
皆さんはお魚好きですか? まあ、日本人ならたいてい好きでしょう、ねえ、お魚。いつも食べているし、とても身近な存在ですよね。でもね、だからといって私たちは魚のことを知りつくしているわけじゃない。実はほとんど何も知らない、といってもいいくらいなんですよ。

いろんな魚がいる

 私はもう魚河岸に20年以上おりますけど、毎日毎朝魚を見るたびに、いっつも不思議に思うことがあるんですよ。なんだか分かります? それはですね、「何でこんなにいろんな魚がいるんだ?」ということなんです。毎朝市場のなかを歩いていると、こんなのやらあんなのやらがいーっぱいいる。何でこんなにいろんな魚がいるんだ! いやもう、つくづくそう思います
  私はマグロ屋をやっておりますから、マグロのことはいろいろ勉強してます。でも他の魚については、正直言ってマグロほどには詳しくありません。そこで急に思いたって調べてみたんですよ。河岸の人間に聞いてみたり、書物をひもといてみたりしてね。そしたら、へえ〜……なんて感心しちゃうことが、ゴロゴロありました。いやもう、自分は魚のことなんか何にも知らなかったんだ! ちょっと恥じ入った次第です。
でもこれが実に面白い! あんまり面白いから皆さんにもお話しちゃおうかな、なんてね。

魚の特徴を挙げてみると

 皆さん、魚の特徴を挙げてください、なんて言われたら、どんなふうに答えます? 魚の特徴ですよ。いつも見たり、食べたりしてるからお分かりでしょう? え、何ですって?“水に住んでいる”ふん、なるほど、確かにそうですね。それから・・・・・・、“エラ呼吸”ですか? そうですね、魚はエラを持ってますよね。あとは・・・・・・、“卵からかえる”、ふんふん。で、それだけですか? ああ、“ヒレ”ですか。魚は“ヒレを持つ”生き物ですね。まあ、そんなところかな。
えー、「水に住んでいる」「エラ呼吸をする」「卵からかえる」「ヒレをもつ」、なるほどこれらは魚の特徴を端的にあらわしたものですね。これらを並べておいて、さあこれ何て生き物だ? と逆にたずねたとしたら、どんな人でもまず間違いなく「魚、それは魚だよ!」って答えるにちがいありません 。

変なヤツもいる

 ところがですねえ、これらの特徴をもって、ある生き物を「魚」と決めてしまうことは、どうもできないみたいなんですよ。ヘンなのがね、いろいろいるんです。
たとえば「水に住む」。そりゃあ、ねえ。水にいなけりゃ魚じゃねえだろ、って普通考えますよねえ。でもね、実はそうじゃないのもいるんですわ。九州は有明海に住む「トビハゼ」とか、インドの「アナバス」というヤツなんかは、木の上にも住むんです。するすると木に登っちゃ「絶景かな!」なんて見得を切って、プカ〜ッと一服しちゃうという変なヤツなんですね。
それから「エラ呼吸」。これもね、必ずしもそうだとはいえません。いま申し上げた木登りアナバスなんか、エラの後ろのところに特別な呼吸器官がついていて、木の上で新鮮な空気を深呼吸するっていいます。あと、アフリカに住んでいる肺魚というヤツ、こいつはもっと巧みに肺を使うんですが、あんまり水中が好きじゃないんですね。いちおう魚という建前だから水に住んでいますけど、あんまり長く水中にいると苦しくなって、息つぎしなけりゃ生きていけないというんですから、最初から地上に住めばいいじゃねえか! なんて言っちゃいたくなりますよね。
「卵からかえる」。魚はね、卵をうまないヤツもいるんですよ。知ってます? 体内で受精して、栄養分を供給したのち出産する、卵を産むんじゃなくて、子を産むのもいるんですね。サメとかシーラカンスやエイの一部、それから人気の熱帯魚であるグッピーやモーリーなんかは、出産で産まれてきます。それからカサゴなんてのは、卵生と胎生の中間のような卵胎生というもので、これはおっかさんの胎内で孵化した後も、母胎内で保護され、親と同じような形で「オギャーッ」と産まれてくるんですね。
あとは、「ヒレ」ね。ヒレっていうのは魚の運動器官でして、ちょうど哺乳類が手足を使って活動するように、魚はヒレによって移動したり、平衡を保ったりしています。先ほどの肺魚みたいな肺呼吸のできる魚は、胸鰭が、水上浮上できるように発達していますし、トビウオなんかは大きく跳躍するため、胸鰭が翼のようになっています。一方イワシなんかは、背鰭と尾鰭の間に「脂鰭」という、直接運動に関係しない太古の痕跡のようなものを残しているんだそうです。 そんなわけで、ひと口にヒレと言っても、魚によって形状や種類がさまざまなんですね。

魚の種類は2万5千種類!

 魚ってのは、どうしてなかなか一筋縄じゃあいきません。いちがいに魚というのはこういうものだ、なんて決められないんですね。それというのも、魚というのはその種類はなんと2万5千種類。想像つきます? 2万5千種類なんて言われてもね。皆さんがご自分の好きな魚を並べていって、マグロにコハダにサンマに・・・・・・なんて数えていったら、幾つくらい挙げられますか? 2、30もいけば、かなりのもんですよ。魚河岸だって、数え切れないほどの魚が並んでいるように見えますけど、せいぜい400種類とか500種類くらいですかねえ。その時々で見ればもっと減って、300種類くらいがやっとでしょうかね。ちゃんと数えたことないんで、はっきりとは言えませんが、せいぜいそんなところでしょう。
魚っていうのは、なんでも地球上に初めて登場した脊椎動物だそうで、生物界では人間をはじめとする哺乳類よりも、ずーっと古顔なんだそうです。軽々しく「ヤツら」なんて呼んじゃあいけなかったんですね。
  何しろ由緒正しき魚類の皆サマは、ぽっと出の人間と違って、およそ1億年間の長きに渡り、環境に適合するため、何度も変態をくりかえしていらっしゃったわけで、変態といってもいやらしい意味じゃないですよ。身体の形状や機能を変化させてきたってことです。
で、その結果、数えきれないほどの種類の魚が世界中を泳いでいる、その種類がおよそ2万5千、ということらしいんですね。(つづく)

生田與克―いくたよしかつ
1962年東京月島に生れる。
築地マグロ仲卸「鈴与」の三代目として築地市場で水産物を扱うなかで自然の恵みの尊さ、日本特有の魚食文化の奥深さを学ぶ。
現在、講演会などを通じて魚食の普及に努めるほか、ホームページ「魚河岸野郎」を開設。魚河岸の歴史と食文化を伝える“語り部”として精力的に活動している。

「築地の魚河岸野郎」
http://www.uogashiyarou.co.jp/


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2004年10月掲載記事  
※内容は、掲載当時のものとなります  

 

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