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伝統的食文化の行方を、築地魚河岸の現場からお伝えします 魚河岸発!
今月のテーマ:「言葉」から見る魚と日本人との付き合い
普段から私たちは“サカナ”と気軽に呼んでいますが、海や川などで泳いでいて、ヌルヌルして生臭くて、焼いたり煮たり生で食べたりする、あの美味なるものがそう呼ばれるまでには、なかなか紆余曲折があったのです。

“魚”

 ――皆さん、この字を何と読むでしょうか。そんな字は小学生でも読める、とこうおっしゃることでしょう。サカナ? そのとおりです。誰がどう読んでもsakanaに違いないんですけど、でも小学校の国語の授業ではこれをサカナと読むとは教えていないんですよ。というより、本当はサカナとは読みません。国語辞典を引くと“サカナ”と出てきますけどね。でも当用漢字ではこれを音読みで「ギョ」、訓読みで「ウオ」と教えます。この「魚」という字は象形文字で最も古い漢字のひとつなんですね。では何故この字をサカナと読むようになったのか。そもそもサカナとはどこからきた言葉なのでしょうか。
実はサカナというのは酒の肴、つまり、酒といっしょに供える食べ物のことなんですね。だから字で書くとサカナは“酒魚”、あるいは“酒菜”と書きます。あれ? 変だな。“酒魚”は分かるけど、“酒菜”というのはちょっと違和感がありませんか。“菜”というと菜っ葉とかいった、つまり野菜のことじゃないですか。野菜がサカナなのかよ? ふざけるな! ウチは八百屋じゃねえ、と魚屋が怒り出しそうですが、実はですね。野菜もかつてはサカナと呼んだんですよ。いや、本当。酒に供えるものはみんなサカナでした。もともとサカナというのは、地べたに生えていて食えるヤツや、海や川で泳いでいて食えるヤツや、空を飛んでる食えるヤツとか、その辺を走り回っている食えるヤツ、それらすべての総称でした。ただ、泳いだり、飛んだり、走ったりするやつ、つまり動物系のやつはサカナのなかでもより旨そうなので「本格的な食べ物」という意味でマナと呼んでいました。

“真菜(マナ)”

 一方地面から生えてくるやつ。こいつらは植物で動物系よりちょいと落ちるということから「粗略な食べ物」という意味のソサイと呼ばれました。“蔬菜”です。この「蔬」は「あおもの」とも読みますね。蔬菜(ソサイ)もサカナには違いないけれど、むしろ動物系の真菜(マナ)の添えものという位置づけでなっていきまして、やがてサカナの仲間から排除され、サカナといえば真菜(マナ)。なかでも最も豊富な資源である魚(ウオ)がサカナの主流になっていったのです。
  さて、この真菜(マナ)を料理したり、神前に供えるために用いた板を「真菜の板」ということで「真菜板」といいました。つまり「まな板」ですね。“俎”。俎の偏の部分は肉を表わしていて、つくりの方は台を表わしています。つまり、肉を載せる台という意味です。そして、サカナというのは真菜を調理することから、「にくづき」に煮るという意味の「メナ」をつけて“肴”(サカナ)と書きました。したがってサカナとは“肴”のことで、そのうちの主流である魚(ウオ)が慣例的にサカナと読まれるようになったというわけでなんですね。そうした複雑な成立事情から、戦後の国語教育では「魚」をあえてサカナとは読ませずに、ウオ、ギョと教えたようです。

生田與克―いくたよしかつ
1962年東京月島に生れる。
築地マグロ仲卸「鈴与」の三代目として築地市場で水産物を扱うなかで自然の恵みの尊さ、日本特有の魚食文化の奥深さを学ぶ。
現在、講演会などを通じて魚食の普及に努めるほか、ホームページ「魚河岸野郎」を開設。魚河岸の歴史と食文化を伝える“語り部”として精力的に活動している。

「築地の魚河岸野郎」
http://www.uogashiyarou.co.jp/


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2004年12月掲載記事  
※内容は、掲載当時のものとなります  

 

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